ドネツク人民共和国往還記(上)橋の向こうに戦場がある

執筆者:国末憲人 2015年10月29日
エリア: ヨーロッパ

 古代・中世の栄枯盛衰は言うに及ばず、「消え去った国家」は現代世界でも珍しくない。歴史の流れに呑み込まれた南ベトナムやソ連、東ドイツから、いったん独立をうたったものの長続きしなかったビアフラ共和国(ナイジェリア)やクライナ・セルビア人共和国(クロアチア)まで、数え切れない。

 ウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」もたぶん、そのような国の1つになるだろう。ロシアの支援を当てに独立を宣言したものの、シリア空爆に関心が移った親分から見放され、その存続は風前の灯火だ。

 それだけに、この「国」が存在するうちに訪問したいと考えた。その時の様子を、少し時間が経ってしまったが報告したい。

カテゴリ: 政治 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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