米艦「南シナ海作戦」で中国が「抑制的」な理由

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2015年10月30日
エリア: 北米 中国・台湾

 10月27日に米海軍のイージス艦が南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島近海で、中国が建設した人工島の「領海」内を航行した問題について、中国政府は現在までのところ、かなり抑制された反応を見せている。現在、北京で指導者が一堂に会して経済政策を議論する党中央委員会第5回全体会議(五中全会)が開催中ということもあり、報道のトップはすべて五中全会のニュースで、同日夜も南シナ海に関するニュースは、3番手、4番手という扱いだった。

 こうした主権にかかわる外国との対立では必要以上に強気の反応を示すのが中国だが、今回は相手が米国ということもあり、「米国に慎重な行動を求める」という部分が強調されているニュアンスがはっきりと伝わってくる。

 28日の朝刊でも、民族主義的な論調で知られる『人民日報』傘下の『環球時報』ですら、社説で「中国人はまず気を落ち着け、冷静と寛容を十分に頼り、怒りに走らず、理性的に米艦の嫌がらせを受け止めなければならない」と我慢を呼びかけ、いささか肩すかしを食わされる感じだった。これは、そうした「主旋律」に当面は徹するようメディアに指示する宣伝部門の方針があるからだ。

 米海軍イージス艦に対し、中国海軍はミサイル駆逐艦「蘭州」とフリゲート艦「台州」の2隻の軍艦を派遣し、追跡、警告を行ったという。中国政府は27日に外交部と国防部がそれぞれ談話で米国を批判したほか、駐北京の米国大使を外交部に呼び、「厳正な話し合いの要望と強烈な抗議」を伝えた。ただ、その言葉はどれもソフトかつあいまいで、総じて言えば、まだこの段階では戦闘モードには入らず、出方をうかがいながら、強制的に排除をするといった明確な態度表明は留保している段階にあるように見える。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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