インテリジェンス・ナウ
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仏情報機関長官が警戒した「ハイブリッド型テロ」が起きた

春名幹男
執筆者:春名幹男 2015年11月17日
エリア: ヨーロッパ 中東

 フランスの2015年1月は、パリの風刺週刊紙シャルリエブド襲撃などの連続テロ事件で幕を開けた。あの時は、計17人の犠牲者を出したが、追悼デモにフランス全土で計370万人もの人々が参加してテロに対する市民の団結姿勢を示し、パリのデモではメルケル・ドイツ首相ら欧州首脳も隊列に加わった。その後パリで、イスラム過激派への対応策を協議する緊急閣僚会合も開かれた。
 あれから10カ月余、その教訓が生かされず、今度の同時テロでは500人近い死傷者を出す未曾有の事件となった。しかし、オランド仏大統領が、「これは戦争行為だ」と言葉で非難するだけで、具体策など打ち出せず、ただ強烈な衝撃に圧倒された形だ。

内と外からの脅威が同時に

 実は、事件の2週間前、フランスの対外情報機関「対外治安総局(DGSE)」のベルナール・バジョレ長官(66)はワシントンで、米中央情報局(CIA)などとシリア内戦や対テロ対策などについて緊急協議するため、訪米していた。
 その際、CIAとジョージワシントン大学の共催で開かれた米、英、イスラエル情報機関トップとのインテリジェンスに関するパネル討論にも参加、次のような発言をしていた。
「今われわれは2種類の脅威にさらされている。1つは内なる脅威だ。それに加えて、外部からの脅威がある。それは、外部で計画され、指令されたテロ、あるいはわれわれ諸国に帰還した戦士によるテロだ」
 バジョレ長官はキャリア外交官だが、ヨルダンやイラク、アフガニスタンの大使を務め、サルコジ政権で国家情報会議議長も経験したインテリジェンスのプロである。
 長官の言う2つの脅威とは、換言すれば「ハイブリッド型の脅威」だ。つまり、「内なる脅威」と「外からのテロの脅威」を同時に警戒しなければならない、という意味である。
 前者は、「ホームグロウン(自国育ち)」のテロリストの増殖である。それに、対外活動強化へ方針を転換した「イスラム国(IS)」からのテロの危険性が高まった。
 今度のパリ同時テロでは、長官の予測通り、まさにこれら2つの脅威が同時にパリを襲った、ということになる。犯人はフランス人を含めた多国籍で、6人はISから帰ってテロを起こしたとみられている。またフランス国内の支援組織もあったようだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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