テロの温床「モレンベーク」を歩く(下)「黒いオアシス」を育んだもの

国末憲人
執筆者:国末憲人 2015年11月27日
エリア: ヨーロッパ 中東

赤丸が今回の襲撃と関連した場所、青丸が警察署、緑丸はユダヤ博物館。上部灰色枠の表題左端にある→をクリックすると施設名枠が表示され、施設名横の色丸をクリックすると地図上の丸とリンクします。上部右端の窓枠マークをクリックすると、別ウィンドウで地図が拡大されます。

 

 20年以上前から過激派の巣窟と見なされてきたイスラム教礼拝所「サントル・イスラミック・ベルジュ(CIB)」が位置するマンチェスター街は、途中で曲がった坂道である。曲がり角から見下ろすと、行き当たりの先に運河が見えた。この光景に見覚えがある。

 

イスラム過激派の活動拠点

 米9.11同時多発テロから1年が経った2002年10月、欧州のイスラム過激派取材の一環として訪ねたのが、この礼拝所だった。何せ、アルカイダと直接つながるといわれる組織である。いったん入ると2度と戻れないのではないか。おっかなびっくりで戸口をくぐった記憶がある。当時、この施設は同じ運河の近くの現在より少し南の通りに位置していたが、周囲の雰囲気はよく似ている。

 その時に応対したのは、意外にも快活で、礼儀正しい初老の男だった。CIBの前事務局長で、アブドラ・アブ・アブドラジズと名乗った。その名はアラビア語風であるものの、元の名前をジャン・バスタンというカトリック家庭出身のベルギー人である。1960年代後半、哲学専攻の大学を中退し、「生きる意味を求めて」旅に出た。モロッコに住み着き、やがてイスラムに改宗した。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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