「イスラーム国」の資金源「密輸」を断つ難しさ

池内恵
執筆者:池内恵 2015年11月29日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東

「『イスラーム国』の資金源を断て」というのは、言うは易しく、行うは難い。

 これについて、最近のニュースを手掛かりに考えてみよう。

U.S. sanctions businessman helping Syrian government buy oil from Islamic State, Reuters, November 25, 2015.

 米国財務省が行っている「イスラーム国」関連の経済制裁の対象に、「イスラーム国」の支配下の石油をアサド政権に販売仲介していた起業家が加えられたという。これは数多く行われているこの種の制裁指定の一つに過ぎない。しかし、「イスラーム国」をめぐる通俗的な報道や議論から目を話して、考えてみるに値する情報を与えてくれる。

「イスラーム国」の「密輸」とは

「イスラーム国」の密輸ルートの遮断の進捗がなぜ捗々しくないのか。これは少しでも現地の経済社会的現実を考えてみれば分かることである。

 シリアの石油は誰が買って誰が使っているのか。

 これは、昔も今も、まずシリア人である。これはそう簡単に変わる現実ではない。

 シリアは資源にも産業にも乏しく、外貨獲得手段は限られている。石油を外から買ってくれば高くつく。東部のささやかな油田から石油を汲み出し精油して、国内向けのパイプラインを通じて、パイプラインの先からは各都市にタンクローリーで運んで、発電し、車を動かしてきた。内戦だろうが「イスラーム国」だろうがこの現実を変えるはずがない。むしろ内戦で経済が崩壊し、いっそう国内消費のための石油は国内から買ってくるしかなくなっている。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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