国際人のための日本古代史
国際人のための日本古代史(69)

「原節子の死」に思う「斎王」の運命

関裕二
執筆者:関裕二 2015年12月7日
エリア: 日本

 2015年9月に、銀幕の大女優・原節子が亡くなっていたことが明らかになった。
 引退後、驚くほどきれいに世間から姿をくらました。原節子は伝説となり、神秘性は深まり、神格化されていった。
 そもそも女優と「神」は、近しい間柄にあった。女優の原型は「巫女」で、神を祀るのが、本来の役割だったのだ。神を祀り、神と結ばれ、神そのものとなるのが女優である。
 女優と巫女の歴史を探ってみれば、意外な古代史がみえてくるはずだ。

最古の女優・アメノウズメ

『日本書紀』の天の岩戸隠れ神話で、女神のアメノウズメ(天鈿女命)は「俳優(わざをき)」をしたと記される。アマテラス(天照大神)が隠れた岩戸の前で、舞い、演じ、神を慰め、神意をうかがった。アメノウズメは女優第1号だ。
『古事記』の同じ場面では、アメノウズメはヌードショーを始めている。こちらの方が、古い伝承だろう。連載中述べてきたように、もともと日本の太陽神は男神だったから、アメノウズメは服を脱いで神の歓心を買ったのだ。
 天孫降臨神話でも、女優・アメノウズメは活躍する。
 アマテラスの孫・ニニギ(天津彦彦火瓊瓊杵尊=あまつひこひこほのににぎのみこと=)を地上界に降ろそうとすると、天八達之衢(あまのやちまた、天上界の分岐点)にサルタヒコ(猿田彦大神=さるたひこのおおかみ=)が待ち構えていた。鼻の長さ七咫(ななあた)、背の高さ七尺(ななさか)の大男で、口、尻が輝き、目は八咫鏡(やたのかがみ)のようで、照り輝く様は赤いホオズキのようだった。同行する他の神々を次々に遣わしたが、サルタヒコの眼力に敵う者はいなかった(霊的な力が強く、恐ろしく、はね返された)。そこで最後の切り札として遣わされたアメノウズメは、胸乳を露わにし、裳の紐を臍の下まで垂らし、嘲笑いながらサルタヒコに対峙する。その結果、サルタヒコはニニギを地上界へと先導することになったのだった。
 このように、芸能のはじまりはアメノウズメの「神遊び(神前で歌舞を演じること)」に由来している。また、アメノウズメがたびたび服を脱いだのは、神と性的な関係を持つためだ。

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執筆者プロフィール
関裕二
関裕二 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』(以上、新潮文庫)、『伊勢神宮の暗号』(講談社)、『天皇名の暗号』(芸文社)など著書多数。
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