国際人のための日本古代史 (153・最終回)

「多神教」日本と文明への懐疑

執筆者:関裕二 2023年1月29日
タグ: 日本 中国
エリア: アジア
「人と自然を傷つけることで成り立つ文明」に抗ってきた日本の歴史と文化は、誇りにして良い(C)paylessimages - stock.adobe.com
歴史の古層から世界を見つめる。「急激な進歩」を嫌い、「人と自然を傷つけることで成り立つ文明」に抗ってきた日本は、いま復讐と戦争が連鎖する現代を懐疑する必要があるのだろう。

「スサノヲ篇」を連載している間に、世界情勢はめまぐるしく変化した。ぬるま湯に浸かっていた日本人も、ようやく防衛の重要性に気づいたのではなかろうか。

 はっきりわかってきたのは、「人類が戦争をやめることはけっしてない」こと、「平和憲法を掲げていても、安全ではない」という悲しい現実である。

「非文明」とみなされた明治の日本

 さらに問題なのは、先進国の中で日本だけが多神教的信仰を守りつづけていることの自覚が、日本人にない点なのだ。これが、じつに危なっかしい。世界の多くの国々は一神教的な論理を掲げて多神教世界を野蛮視し、蹂躙してきたからだ。キリスト教徒は多神教徒を啓蒙し「文明社会」に導く義務があるとうそぶき、植民地支配を正当化した。これが帝国主義である。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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