経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(79)

経済共同体「AEC」発足:ASEANをみる5つのポイント

田中直毅

 2016年の世界経済ほど、変化のベクトルが多様な年は最近ではない。米国の利上げ過程と大統領選挙の行方を論じるには、5本の展望論文では済まないだろう。欧州連合(EU)では、英国のEU離脱の国民投票実施というストレス要因と、中東、北アフリカからの難民受け入れという地政学的要因の重なりの中で、「イスラム国」(IS)によるテロの脅威が襲いかかった。1年前は、ギリシアのユーロ離脱問題や、ロシアに支援されたウクライナ東部の分離主義者の問題が覆いかぶさっていたが、今日からみればむしろ「軽い課題」であったとさえいえよう。いまやEUの行方は、歴史の単位での見直しが迫られているといってよい。日本の周辺においては「航海の自由」原則を掲げ、展望軸を中国に合わせるに至った米国との協調課題がある。大統領選挙の年である今年は、米国の国際関与の趨勢を見極めなければならない。
 中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立し、融資プロジェクトの選択を開始させる。債券の発行に当っては格付けの取得をあえて回避するとも言われているが、こうした異形の金融形態は、中国の壮大な意思とその脆弱性とをともに表示するものといえる。内外の困難を極める課題に、中国の指導者がどのような優先順位で取り組むのかを注視せねばならない。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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