台湾総統選の結果を「なかったこと」にした中国

野嶋剛

 中国は、開き直った。民進党が圧勝した1月の台湾選挙は基本的に「なかった」ことにしよう。それが中国の結論であると見るべきだろう。

 台湾総統選・立法委員のダブル選挙で野党・民進党は総統だけでなく、立法院も過半数を制して「完全執政」を史上初めて成し遂げた。民進党は台湾の主体性強化を掲げ、将来の独立も目標に置いている政党である。台湾統一を国家目標とする中国からすれば、決して望ましい選挙結果ではない。

 選挙後、中国は、あるいは沈思黙考の時としたのか、しばらく鳴りを潜めていたが、ここにきて、一気にカードをオープンにした。この間、民進党と中国との間では、水面下の交渉が続いていたとも言われる。台湾の人々には「この選挙結果をみて、中国はもしかすると態度を変えるのではないか」というほのかな期待があったが、3月5日、全国人民代表大会(全人代)のなかで、上海代表団との分科会に出席した習近平・中国国家主席は、「大陸の台湾政策は明確かつ一貫しており、台湾政局の変化によって変わるものではない」とバッサリ切って落とした。

 習氏は演説のなかで3度にわたって、中国と台湾との関係が「1つの中国」の枠内だとする「92年コンセンサス」に言及。「92年コンセンサス」の存在が「歴史的事実であり、中台の核心的意義であり、共同の政治的基礎である」と指摘し、この「92年コンセンサス」の遵守があってはじめて、中台関係は「良好なやり取りを維持できる」と述べた。また、台湾独立について「大陸はいかなる形式での台湾独立への歩みについても反対し、国家主権と領土完全を守り続け、絶対に国家分裂の歴史的悲劇を再演することはない」としている。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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