饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(214)

「出版社幹部」と2足の草鞋履く「駐日仏大使」夫人

西川恵

 ティエリー・ダナ駐日フランス大使の妻フロランス・ゴドフェルノさんは、フランスと日本を頻繁に行き来しながら、パリの出版社の仕事と大使夫人の役割を両立させている。ただでさえ多忙な出版社勤務。どうやってこなしているのか、インタビューに応じてくれた。

 夫人はパリの出版社「アルバン・ミシェル」社に勤務して24年。コミュニケーション・メディア部門の責任者として10人の部下を率いる。ダナ大使と事実婚関係にあり、パートナーとなって14年になる。

 ――これまでご主人と離れて暮らしたことはあるのですか。

 夫人 パートナーとなって夫はずっと本省(フランス外務省)勤務で、出張はよくありましたが、20日以上離れて暮らしたことはありません。夫が駐日大使に任命された時(2014年6月)、仕事を辞めるか、続けるか2つの選択肢がありました。私は長年働いてきた出版社に愛着があり、また高校に通う16歳の息子もいます。そこで仕事を続けながらフランスと日本を行き来しようと思いました。しかし問題は出版社でした。

 ――どういうことですか。

 夫人 強く難色を示したのです。家族経営の出版社で、社長は77歳。私が「日本に行っている間はテレワーク(IT技術を活用した場所や時間にとらわれない働き方)でやりたい」と話しても、最初はまったく聞く耳を持ちませんでした。ただ若い副社長がものの分かった人で「試してみよう」と言ってくれました。私も「テレワークを試して、もしうまくいかなかったら辞めます」と伝えました。

執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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