「マイナス金利」と「株安」で強まる「自社株買い」の効用

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2016年4月11日
エリア: 日本

 上場企業が自社の株式を市場で買う「自社株買い」が急増している。日本経済新聞によると、2015年1年間の自社株買い実施額は4兆8000億円と、9年ぶりに過去最高を更新した。今年に入ってもこの流れは一層強まり、1月と2月だけで180社が自社株買いの実施を発表した。その合計額は2兆円に達している。このままの勢いが続けば、今年はさらに過去最高額を更新するだろう。

 1月には、NTTドコモが5000億円の自社株買いを発表。これは発行済み株式の5.7%に相当する規模だ。また2月には、ソフトバンクグループが同じく5000億円の自社株買いを発表したが、これは発行済み株式の14.2%に当たる。このほかにも日産自動車が4000億円(発行済み株式の6.7%)、新日鉄住金が1000億円(同4.3%)、いすゞ自動車が600億円(同5.4%)と、大規模な自社株買い発表が相次いでいる。

 背景に大幅な金利低下と株安があるのは間違いない。

 

「株主還元」にも役立つ

 ここ数年のコーポレートガバナンス強化の流れで、日本企業の間では配当を増やす増配の動きが強まった。配当額を株価で割った「配当利回り」は、東証1部の全銘柄の加重平均で2%に達する。一方で、金利の低下によって、10年を超す長期の社債でも1%を大きく下回る低金利で調達できるようになっている。つまり、企業からみ見ると、株式で調達した「資本コスト」が割高になっているのだ。そうした中で、自社株買いを進めれば、配当に回す資金を減らすことができる。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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