「チラン海峡」に架ける橋:サウジ・エジプト・イスラエルの地政学

池内恵
執筆者:池内恵 2016年4月10日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東 アフリカ

 4月7日からエジプトを訪問しているサウジアラビアのサルマーン国王は、8日のスィースィー大統領との会談の後の共同記者会見で、「紅海を越えて」サウジとエジプトを繋ぐ橋の建設で合意したと発表した。

実態は「チラン海峡大橋」

「紅海を渡る橋」となるとアラビア半島とアフリカ大陸を繋ぐ100kmにも及ぶものを想像してしまうかもしれないが、もっと現実的なものである。サウジアラビアとエジプトとの間には紅海から北に食い込んだアカバ湾がある。アカバ湾の紅海への湾口がチラン海峡である。チラン海峡は狭いところでは10km程度しかなく、間にチラン島やサナーフィール島があり、浅瀬も広がっている。

「紅海を横断する」「アジアとアフリカをつなぐ」といっても、最短距離の、アカバ湾の入り口をつなぐだけであり、橋の全長は、案によってことなるが32km、あるいは21kmなどとされており、海上の部分は7kmや10km程度になるようである。

 チラン海峡に、島伝いに橋を架ければ、現在はヨルダンとイスラエルによって隔てられているサウジとエジプトが直接陸路で繋がる、というのはムバーラク政権時代から温められてきた案であり、特に2013年にムスリム同胞団出身のムルスィー大統領に対するスィースィー将軍のクーデタをサウジが支持して以来、浮上していた。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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