ドイツ「脱原発」の現在(下)「石炭・褐炭王国」の苦悩

篠田航一
執筆者:篠田航一 2016年6月6日
エリア: ヨーロッパ

 ドイツのエネルギー転換(エネルギーヴェンデ)の大きな目標とは、原発をやめ、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを増やすことだけではない。並行して、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を排出する石炭、限りある資源の石油など「化石燃料」からの撤退も目指している。だがこれが簡単ではない。特に石炭と褐炭は、「分かっちゃいるけどやめられない」状態になっている。

褐炭と石炭合わせ「4割」

「褐炭」といっても、日本ではあまりなじみのない言葉かもしれないが、端的に言えば石炭の一種だ。水分を多く含み、いわば低品質の石炭といえば分かりやすいかもしれない。ドイツではエネルギー資源を分類する時、たいていこの褐炭と石炭を別個に分けている。
 ドイツは褐炭、石炭の両方を豊富に産出する。ドイツ経済エネルギー省の2015年の統計資料によると、国内の総発電量に占める割合は、褐炭が24.0%、石炭が18.2%で合計42.2%。電力供給の実に4割を占める巨大エネルギー源だ。簡単に手を引けない状況なのもよく分かる。
 福島第1原発の事故後、2022年までに国内17基の原発全廃を決めたドイツでは、風力や太陽光発電など再生可能エネルギーの活用は確かに進み、総発電量の3割をカバーするまでに成長した。だが再生エネは気象条件次第で発電が「天気任せ」になる側面も強い。こうした背景もあり、原発をなくす分の穴埋めのエネルギー源として石炭・褐炭は外せなくなっている。採掘量は事前に一定の計算ができるため、安定性も高いのだ。

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執筆者プロフィール
篠田航一
篠田航一 しのだ・こういち 1973年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。97年、毎日新聞社入社。甲府支局、武蔵野支局を経て、東京本社社会部で東京地検特捜部などを担当。ドイツ留学後、2011年から4年間、ベルリン特派員として主にドイツの政治・社会情勢のほか、ウクライナ紛争などを現場取材。15年5月より青森支局次長。著書に『ナチスの財宝』(講談社現代新書)。
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