中国の「鉄道包囲網」のなか「タイ」が進むべき道

執筆者:樋泉克夫 2016年6月10日
エリア: アジア

 5月25日付の日本経済新聞は、1面トップでインドネシアのジョコ・ウィドド大統領との会見記事を掲載し、インフラ建設に関し従来の方針を改め、日本企業にも比重を置く旨の発言を伝えている。インフラ輸出の象徴でもある新幹線建設をめぐって、インドネシアを舞台に展開された昨年来の日中両国の動きを振り返ってみると、インドネシア政権の関心が中国から日本へ移ったとも考えられる。だが、だからといって東南アジアで日本が優位に立ったと思い込むのは早計というものだろう。

 それというのも、東南アジアにおける新幹線建設の大本命は、やはり中国が「泛亜鉄路」と呼ぶ東南アジア大陸部を南北に貫く路線であり、わけても、その中心は昆明を起点にラオス(ヴィエンチャン)、タイ(バンコク)、マレーシア(クアラルンプール)の3カ国の首都を経てシンガポールに繋がる「泛亜鉄路中線」だからだ。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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