ロシアが「原爆投下」米国糾弾キャンペーンを張る狙い

名越健郎
執筆者:名越健郎 2016年6月24日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: ロシア 日本

 ロシアのプーチン大統領側近のナルイシキン下院議長は6月16日、安倍晋三首相と会談し、プーチン大統領の親書を手渡すとともに、終戦直後にソ連が広島、長崎の被爆地を撮影した映像など関連資料を提供した。同議長は会談後の会見で、「原爆投下によって数十万人が犠牲になったことは誠に遺憾だ」と述べ、オバマ大統領が5月27日の広島訪問で「被爆者に謝罪しなかったことに驚いている。アメリカの軍人と政治家は犯罪の責任がある」と原爆投下の責任を追及した。ロシアは、日本の世論調査で9割以上が評価したオバマ大統領の広島訪問に冷や水を浴びせ、日米分断を画策しようとしている。

ロシア・スパイが広島・長崎調査

 1945年8月の広島、長崎への原爆投下直後、スターリンが在京ソ連大使館の情報要員に対し、現地調査を命じたことはあまり知られていない。「領事」の肩書で勤務していた軍参謀本部情報総局(GRU)のミハイル・イワノフ大尉と、ゲルマン・セルゲーエフ武官補佐が、8月16、17日に列車で広島、長崎を訪問。廃墟と化した爆心地で写真を撮り、資料を収集した。2人の決死の調査行は、後に証言を聞いたロシアの歴史学者、アレクセイ・キリチェンコ氏のフォーサイト寄稿記事「終戦翌日にソ連スパイが見た『ヒロシマ・ナガサキ』」(2005年9月号)に詳しい。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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