饗宴外交の舞台裏 (218)

「EU離脱」とともに「排除」される英国ワインの運命

執筆者:西川恵 2016年7月13日
エリア: ヨーロッパ
この首脳会議のあと、EUでの「最後の晩餐」に臨んだキャメロン首相(中央)の心中は……(C)AFP=時事

 

 欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の国民投票を受けて6月28、29の両日、ブリュッセルでEU首脳会議が開かれた。キャメロン英首相は初日の夕食会だけに出席したが、“政治的賭け”に敗れた失意の同首相にとって、最後となるEU首脳会議の夕食をじっくり味わう心のゆとりはなかっただろう。

 

「よく戦った」

 6月23日の国民投票に向けた英国内の残留、離脱両派の激しいキャンペーンは、EUの他27カ国首脳にとって腹立たしいものだった。英国の離脱派は、EUがいかにダメな組織で、これが英国の国益を損ねていると、これでもかとばかり繰り返した。EU首脳らには「EUと移民がスケープゴートにされた」との思いが強い。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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