出光・昭シェル「合併反対」騒動:経営統合に潜む「可能性」と「リスク」

執筆者:後藤康浩 2016年7月13日
エリア: アジア
1年前に統合計画を発表した際は笑顔だったが……(出光興産の月岡隆社長=右=と昭和シェル石油の亀岡剛社長)(C)時事

 

 出光興産と昭和シェル石油の経営統合計画が、出光創業家の反対で頓挫する可能性が出ている。創業家の“反乱”には思惑と打算もあり、与する考えはまったくないが、今回の件は日本でも急増する「経営統合」をより慎重に考える必要性を示しているのも事実だ。即効性の合理化効果のみを求める経営統合に潜む落とし穴に注意するべきである。企業の理念、文化の違いや、なにより社員、取引先の心情を軽視した「木に竹」どころか「鳥と魚」を接ぐような経営統合は、長期的にみればうまくいくはずがないからだ。

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執筆者プロフィール
後藤康浩(ごとうやすひろ) 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
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