朝鮮半島「次の一手」(中)「THAAD韓国配備」の波紋

平井久志
執筆者:平井久志 2016年7月21日

 米韓両国は7月8日、米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を在韓米軍に配備することを決定したと発表した。さらに韓国政府は同13日、THAADを韓国南部の慶尚北道星州の韓国空軍基地に配備すると発表した。韓国へのTHAAD配備決定は中国の強い反対を考慮し、当初は早くても秋以降とみられていた。だが、北朝鮮が6月22日に中距離弾道ミサイル「ムスダン」(射程約2500~4000キロ)の発射実験を成功させたことで一気に進行した。韓国政府は、時間を掛けても中国やロシアを説得できない状況で、北朝鮮の核・ミサイル脅威が明白になっているうちに早期に発表した方が得策という判断をしたとみられる。

中国は強く反発

 THAADの韓国配備決定に中国、ロシアは強く反発した。中ロ両国は、在韓米軍へのTHAAD配備は北朝鮮の脅威を理由にしているが、それは口実で、中国やロシアへの軍事的な対応であると受け止めている。中ロ両国は、THAADシステムに含まれるXバンドレーダーは中国東北部やロシア極東部をカバーすることができるとし、安保上の脅威とした。中国は、THAADシステムの米軍レーダーが米本土を射程に収める中国軍のミサイルを監視下に置くことを警戒している。
 習近平国家主席とプーチン大統領は6月23日タシケントで開催された上海協力機構に出席する中で首脳会談を持ち、さらに同25日に北京に移り再び首脳会談を開いた。両首脳は朝鮮半島へのTHAAD配備反対を盛り込んだ共同声明を2度も発表した。
 中国外務省は、韓国配備決定が発表された8日「強烈な不満と断固たる反対」を表明し、配備中止を求めた。中国外務省は「THAAD配備は朝鮮半島の非核化にプラスにならない上、中国を含めた各国の安全保障を著しく損なう」と批判した。
 また、ロシア外務省も同日声明を出し、THAAD配備が「世界の戦略的安定に悪影響を与える」と批判、「非常に深刻な懸念」を表明した。声明はTHAADについて「地域の緊張を高め、非核化の課題を含む朝鮮半島の複雑な問題を解決する上で、新たな障害をつくり出す」と指摘し、配備決定を見直すよう求めた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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