「スー・チー政権」4カ月(上)密接に絡む「少数民族」「エネルギー」問題

執筆者:樋泉克夫 2016年7月25日
タグ: 憲法改正 中国
エリア: アジア
憲法規定で大統領にはなれなかったものの、事実上の国家元首ではある(C)EPA=時事

 

 3月15日にミャンマーで発足したティン・チョー政権は当初の試運転期間を過ぎ、いよいよ本格始動の時を迎えた。54年ぶりに誕生した文民政権であるだけでなく、長期にわたって軍事政権と激しく対峙してきたアウン・サン・スー・チーが政権中枢を支えているだけに、“民主化ミャンマー”への内外からの期待は高い。

 

事実上の「スー・チー政権」

 昨年11月の総選挙で圧倒的勝利を納めた国民民主連盟(NLD)ではあるが、憲法の規定(本人や配偶者、子供が外国籍であったり、外国から何らかの恩恵を受ける立場にある場合は、国家元首の就任要件に欠けると定めた59条)によって、スー・チーNLD党首の大統領への道は封じられている。そこでNLDは、憲法改正を訴える一方で、スー・チー党首に代わって党首側近のティン・チョーを大統領に据えた。だが同大統領がNLDに加わったのは最近のことともいわれ、それゆえに党内基盤に疑問符が付くのは致し方ないだろう。経歴に関して『CNN』など海外メディアの報道が混乱するほどに、政治家としては未知数の部分が多い。スー・チー党首のお抱え運転手だったとの説も流れた。だが考えてみれば、この混乱は新政権の実態を率直に反映しているともいえそうだ。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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