「シン・ゴジラ」で「集団安全保障措置」を考える

執筆者:伊藤俊幸 2016年9月16日
エリア: 北米 アジア
日本だけではなく、世界も振り回していたシン・ゴジラ

 庵野秀明総監督の「シン・ゴジラ」は、今年の日本映画最大級のヒット作となるようだ。興行面での成功もさることながら、ゴジラという怪獣に日本政府がどう対処していくかというそのリアリズムにも、各方面から注目が集まった。
 安倍首相は9月12日、自衛隊高級幹部会同に伴う懇親会で次のように挨拶したという。
「今話題の映画『シン・ゴジラ』でも、自衛隊が大活躍していると聞いています。(中略)統合幕僚長以下、自衛隊員の皆さん、かっこよく描かれていると伺っております。このような人気もまた、自衛隊に対する国民の揺るぎない支持が背景にあるものと思います」
 もちろん筆者も観た。確かに前半部分の政府の対応の様子は、東日本大震災を想起させる迫真に満ちたものだった。だが筆者がより関心を抱いたのは、後半、アメリカ軍や国連の名前が出てくるあたりからだ。そこで、「シン・ゴジラ」を国際的な視点で考察し、安全保障という観点から論じてみようと思う。解説の都合上、まだ観ていない人にとってはネタバレになる可能性もあるが、お許しいただきたい。

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執筆者プロフィール
伊藤俊幸(いとうとしゆき) 元海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、日本安全保障・危機管理学会理事。1958年生まれ。防衛大学校機械工学科卒業、筑波大学大学院地域研究科修了。潜水艦はやしお艦長、在米国防衛駐在官、第二潜水隊司令、海幕広報室長、海幕情報課長、情報本部情報官、海幕指揮通信情報部長、第二術科学校長、統合幕僚学校長を経て、海上自衛隊呉地方総監を最後に2015年8月退官。
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