インテリジェンス・ナウ
インテリジェンス・ナウ

米大統領選当日「ロシアのサイバー攻撃」はあるか:NSAの反撃も

春名幹男
執筆者:春名幹男 2016年9月21日
エリア: 北米 ロシア

 11月8日の投票日まで50日を切った米大統領選挙。その選挙当日、米政府が最も恐れているのは、各州の投票・集計システムに対して、ロシア情報機関がサイバー攻撃をかける、という悪夢のような事態である。
 実は、既に米国の一部の州選挙管理委員会が今年6月以来、サイバー攻撃の被害を受けていることが分かった。連邦捜査局(FBI)の国家安全保障部門はこのほど、各州に対して発した「フラッシュアラート(警戒速報)」で、これらの被害を報告。被害状況や攻撃の技術的特徴などを伝達したという。
 選挙当日、投票結果は各投票所から郡の選管、さらに州選管に報告という形で、集計システムを通じてまとめられる。そのシステムがサイバー攻撃を受けた場合、正しい選挙結果が報告されず、米民主主義の根幹が揺らぐ。米国には、正常に大統領選挙を実行するための手だてがあるだろうか。

攻撃受けた2州の選管

 米報道によると、選管のデータベースがサイバー攻撃を受けたのは、アリゾナ州とイリノイ州。両州とも、ハッカーが選管のコンピューターに侵入して、有権者登録に関する情報を盗もうとした形跡が見られるという。
 アリゾナ州選管が攻撃されたのは5月末。被害状況を調査したFBIの指摘を受けて、インターネットとの接続を断絶して、調査した結果、郡レベルで選管スタッフ1人のユーザーネームとパスワードが盗まれる被害があったと伝えられている。
 イリノイ州では7月に有権者登録データを記録したコンピューターへの侵入が発見された。ただ、データ書き換えの事実は確認されていない。
 両州のほか、少なくとも2州が攻撃を受けた可能性があり、現在全米各州の選管当局が点検作業を行っている。
 本欄の7月20日付記事でも、ロシア国内情報機関「連邦保安局(FSB)」とロシア軍情報機関「参謀本部情報総局(GRU)」のそれぞれのサイバー組織が民主党全国委員会などをサイバー攻撃し、メール2万通など大量の情報を盗んだことを伝えた。
 アリゾナ州のマシュー・ロバーツ広報部長は「既知のロシア人ハッカーのユーザーネームが残されていた、と間接的に聞いた」とCNNテレビに話している。ただ、FBIはアリゾナ、イリノイの両州の事件については公式には「ノーコメント」としている。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
comment:1
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順