北方領土「共同経済活動」にこれだけのリスク

名越健郎
執筆者:名越健郎 2016年10月14日
エリア: ロシア 日本
国後島中心部に今も残るレーニン像(筆者撮影)

 北方領土交渉のクライマックスとなる12月15日の山口県での日露首脳会談は、「2島プラスアルファ」で合意するとの見方がメディアで支配的となってきた。読売新聞は、歯舞、色丹の2島引き渡しで平和条約を結び、国後、択捉については継続協議とし、自由訪問や共同経済活動を行う見通しと報道。時事通信も国後、択捉の協議は先送りし、協力して開発や経済振興に取り組む案が検討されていると伝えた。日露両国が「プラスアルファ」の部分で、国後、択捉での共同経済活動を打ち出すとの見立てだ。だが、現実問題として両国の共同経済活動は容易ではない。筆者は国後、択捉で発行されている地元紙をメールで送ってもらっているが、計約1万7000人が住む4島では本土のロシア社会以上に犯罪や事故が多発しており、日本人が巻き込まれるリスクがつきまとう。

18歳女性が麻薬中毒死

 やや旧聞に属するが、2009年11月、国後島の森で18歳女性の死体が発見され、島民に衝撃を与えた。この女性はヘロインを吸引して中毒死し、薬物を与えた麻薬密売人が隠ぺいするため遺体を車で森に運んで放置したという。国後島で発行されている地元紙「国境で」によれば、ヘロインを女性に与えたのはウラジオストクから来た麻薬密売人で、サハリンで逮捕され、裁判で5年の刑を言い渡された。純度の高いヘロインは日本では流通していないが、ロシアにはアフガニスタン・ルートで流入する。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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