北方領土「共同経済活動」にこれだけのリスク

執筆者:名越健郎 2016年10月14日
エリア: ヨーロッパ アジア
国後島中心部に今も残るレーニン像(筆者撮影)

 北方領土交渉のクライマックスとなる12月15日の山口県での日露首脳会談は、「2島プラスアルファ」で合意するとの見方がメディアで支配的となってきた。読売新聞は、歯舞、色丹の2島引き渡しで平和条約を結び、国後、択捉については継続協議とし、自由訪問や共同経済活動を行う見通しと報道。時事通信も国後、択捉の協議は先送りし、協力して開発や経済振興に取り組む案が検討されていると伝えた。日露両国が「プラスアルファ」の部分で、国後、択捉での共同経済活動を打ち出すとの見立てだ。だが、現実問題として両国の共同経済活動は容易ではない。筆者は国後、択捉で発行されている地元紙をメールで送ってもらっているが、計約1万7000人が住む4島では本土のロシア社会以上に犯罪や事故が多発しており、日本人が巻き込まれるリスクがつきまとう。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top