トランプ新体制と朝鮮半島(上)「先制攻撃」か「話し合い」か

平井久志
執筆者:平井久志 2016年11月17日
カテゴリ: 政治 外交・安全保障

 トランプ氏の米大統領選挙勝利は様々な衝撃を与えているが、トランプ次期政権の朝鮮半島政策がどうなるのかも重要関心事の1つだ。米国のトランプ次期大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長という異端児同士の組み合わせは、人々の妄想を駆り立てるに十分だ。それだけでなく、韓国では朴槿恵(パク・クネ)大統領が「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」で機能不全に陥っている。
 突発行動の多い金正恩党委員長という「変数」に、朴槿恵政権の機能不全、韓国政局混乱の長期化という「変数」が加わり、それでなくとも予測の困難な朝鮮半島情勢に、トランプ当選というさらに大きな「変数」が加わった状況だ。

「暴走」か「穏健」か予測困難

 トランプ氏が選挙戦で見せた「暴走路線」を現実の政治でも発揮すれば、北朝鮮をめぐる状況はかなり厳しいものになろう。一方で、大統領選勝利後に見せている穏健な姿勢を維持していくなら、オバマ政権の対北朝鮮政策とさほど変化がないかも知れない。トランプ政権の対北朝鮮政策の予測が難しいのは、その両者のぶれがあまりに大きいからだ。当選後の穏健路線が今後も続くものなのか、一時的に猫をかぶっているだけなのか、まだ判断を下せる段階ではない。
 北朝鮮はこれまで通り核・ミサイル強化の路線を継続する可能性が高い。経済建設と核開発を同時に進める「並進路線」は堅持するだろう。トランプ次期米政権の出方をうかがうために一時的に戦術的柔軟性を見せる可能性はあるが、金正恩党委員長の基本は挑発路線である。そこに、トランプ大統領という予測の難しい異端児が加わるだけに、危惧の念は消えない。いずれはトランプ大統領と金正恩党委員長という特異な個性がぶつかる局面が生まれるかもしれない。トランプ次期大統領が、金正恩政権を終わらせるために軍事的手段に出る可能性はないのか? しかし、そうなれば被害を受けるのはおそらくは米国ではなく、韓国と日本だろう。多くの変数に包まれた朝鮮半島情勢の不安と危惧の内実を考えてみたい。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
最新コメント
最新トピック
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順