前回の記事で取り上げた、イスラエルの入植活動を国際法違反と認める安保理決議と同じ日に南スーダン制裁に関する安保理決議案も提出され、アメリカを含む賛成が7票、日本を含む棄権が8票(反対は0)で決議案が採択されなかった。
 この決議案に関しては、アメリカの圧力があったにもかかわらず、日本は賛成に回らず棄権して決議が成立しなかったことで日本でも話題となったが、管見の限り、どのような決議だったのか、なぜアメリカは積極的に推進し、日本は棄権したのかをきちんと説明している報道はあまり見られなかった。

安保理決議の採択に必要な票数

 しばしば、安保理決議の採択に関しては、拒否権が重要な役割を果たすことが強調される。5大国(常任理事国Permanent memberの5カ国という意味でP5と呼ばれる)が特権的に持つ権力として知られるが、国連憲章には「拒否権」という表現は存在していない。国連憲章第27条は安保理の評決について以下のように定めている。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
鈴木一人(すずきかずと) すずき・かずと 東京大学公共政策大学院教授 国際文化会館「地経学研究所(IOG)」所長。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授、北海道大学公共政策大学院教授を経て、2020年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、編・共著に『米中の経済安全保障戦略』『バイデンのアメリカ』『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』『ウクライナ戦争と米中対立』など多数。
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