「トランプの影」と戦ったアカデミー賞が中東とイスラーム世界に与えた3つの賞

 2月26日(米現地時間)に行われたアカデミー賞の発表・授賞式の、水面下に流れる主テーマは「反トランプ」と言っていいものだった。司会者に始まって、誰もが、直接言及しないもののトランプ大統領に一矢報いる意志を仄めかせる趣向を凝らす。これが今年のハリウッドの流行なのだろう。

 賞の行方にもそれは現れていた。黒人の貧困層のゲイという、マイノリティの中のマイノリティをテーマにした「ムーンライト」が作品賞を獲ったことも、白人至上主義的傾向が強くマイノリティの権利に鈍感なトランプとその支持層への意趣返しのように見えるが、それだけではない。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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