「米中首脳会談」日本のメリット

渡部恒雄
執筆者:渡部恒雄 2017年4月12日
にこやかに握手を交わす習近平国家主席(左)とトランプ大統領だったが (c)AFP=時事

 トランプ-習近平の初顔合わせとなる米中首脳会談をどう見ればいいのか? 今回の会談は、基本的には初顔合わせで両者の良好な関係を作ることが目的であり、それ以上の期待は、中国側にはなかったはずだ。日本から見てもそうだが、トランプという想定不可能の大統領は、敵に回すと厄介な存在になることは中国側もよく理解していた。

 かたやトランプ政権側も、最初の会談で大きな成果を得ることは望んでいなかったはずだ。トランプ政権は国務省の中の政治任用が進まず、外交政策を具体的に立てられるような状況にはない。たとえば、ホワイトハウスの匿名高官の事前ブリーフィングのテキストを読んでも、トランプ大統領が選挙中から中国に対して厳しく求めていた為替問題や貿易不均衡などの問題で、米国側が圧力をかけて譲歩を引き出そうというようなふしはなかった。

サプライズは首脳会談最中のシリア空爆

 ただし、ふたを開けてみれば、サプライズはあった。首脳会談の最中のシリアへのミサイル攻撃だ。その影響がどうなるのかは、今後の米中関係の方向性を理解する鍵になるはずだ。今回のシリア攻撃は結果として、米国は必要とあれば軍事力の行使はためらわない、という中国に対するメッセージを送ることになった。それはシリアでの化学兵器使用という偶発が引き起こしたこととはいえ、空爆の「政治利用」はかなり意図的に行われたと考えていいだろう。今回のシリアへのミサイル攻撃は、ロシア軍に被害をださないように慎重に配慮されていることを見ても、化学兵器の再使用を抑止するための軍事行動というよりは、むしろ政治的な意図が勝っていると考えるべきだろう。そのメッセージのターゲットは、トランプ政権の国際的な関与に不安を持つ同盟国や政権の実行力に疑問を持つ米国民に加えて、米国の軍事力行使に衝撃を受けた中国と北朝鮮であったと考えていいのではないだろうか。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄 わたなべ・つねお 笹川平和財団特任研究員。東京財団上席研究員(非常勤)。1963年生れ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士号を取得。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政党政治、外交政策、日米関係などの研究に携わる。05年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団上席研究員。2016年10月より現職。著書に『「今のアメリカ」がわかる本』など。
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