トランプ政権「閣僚・重要ポスト人名録」(13)ライトハイザー

足立正彦
執筆者:足立正彦 2017年5月19日 無料
エリア: 北米
「ロシアゲート」に揺れているが……(C)AFP=時事

 

23.ロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表(69)

 米議会上院で5月11日、指名承認の票決が本会議で行われ、賛成82票、反対14票で正式に承認された。閣僚級では、2月16日に指名されてから4月27日の正式承認まで実に2カ月強もかかった労働長官のアレクサンダー・アコスタ氏に次いで、承認が遅れていた。USTR代表指名が正式承認されたことで、トランプ政権はメキシコ、カナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に向けて、ようやく本格的に動き出すことになる。

 上院本会議に先立って行われた上院財政委員会の票決では、賛成26票、反対0票の全会一致で本会議に回された経緯がある。

 レックス・ティラーソン国務長官をはじめ、これまでの主要閣僚の上院本会議での指名承認票決では、野党・民主党議員からの反対が顕著だった。だが今回は、無所属議員2名を含む48名の民主党系会派からは11名が反対しただけであった。民主党の中にも、米国の貿易赤字削減に必要な通商政策を立案するという役割だけでなく、外国市場の開放や、既存の通商協定の実施状況の監視強化を担うUSTR代表への広範な支持の存在があったことが、この票決の結果からも明らかである。

 一方で共和党からは、ライトハイザー氏の保護主義的立場に懸念を表明していたジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)、ベン・サッセ上院議員(ネブラスカ州選出)、コーリー・ガードナー上院議員(コロラド州選出)の3名が指名反対に回った。

 

 1978年から1981年にかけて共和党の有力上院議員であったロバート・ドール氏(カンザス州選出=当時)のスタッフを経て、第1期レーガン政権で、30代の若さながらウィリアム・ブロックUSTR代表(当時)の下でナンバー2の次席代表に就任。日本などの貿易相手国に対する鉄鋼製品などの輸出自主規制協議を担当し、とりわけ日本に強力な自主規制を迫ったほど、自由貿易には懐疑的な対日強硬派として知られている。

 USTRを離れてからは、ワシントンの大手法律事務所「Skadden, Arps, Slate, Meagher & Flom」に在籍する国際通商弁護士として、米国の鉄鋼業界全体の代理人を務めるとともに、米国鉄鋼大手「US Steel」の顧問弁護士としても活動。中国などからの鉄鋼製品輸入を阻止するために、米国の反ダンピング法を積極的に活用していた。

 3月14日に行われた上院財政委員会の指名承認公聴会で、対日通商関係について、米国は世界最大の農業大国であるにもかかわらず、農産物貿易に関する数多くの貿易障壁を残したままにしていることは理解できず、米国の農産物の輸出を増大させる市場として日本が第1の標的となる、と日本を名指しして挙げていた。

 トランプ大統領は、就任前の1月2日にUSTR代表指名の意向を表明していたが、正式承認まで4カ月近くもかかってしまったため、トランプ政権の通商政策の立案、実施が大幅に遅れることになった。この承認の遅れには、USTR次席代表から離任した後の1980年代後半、米国とブラジルとの通商紛争で、ブラジル政府の代理人をしていたことが背景にある。この経歴が、過去に外国政府の代理人を務めた人物がUSTR代表に就任することを禁じる、1995年制定の「ロビー活動公開法(Lobbying Disclosure Act)」に違反しているとして、民主党上院議員の一部が問題視していたのだ。そのため、「ロビー活動公開法」を適用除外とする米議会の決議案を4月に可決することを優先し、ようやく承認されたという経緯があった。

 今後、トランプ大統領が掲げている「米国第一主義(America First)」に基づく通商政策の立案、実施について重要な役割を担うことになる。ただトランプ大統領は、通商政策の司令塔的役割は商務省に担わせるとの見解を明らかにしており、従来その役割を担ってきたUSTRと商務省、また、新たに改編設置された通商製造政策局(OTMP)との今後の関係が注目される。

 1947年10月11日生、オハイオ州出身。ジョージタウン大学卒業。

 

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執筆者プロフィール
足立正彦 住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト。1965年生れ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より現職。米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当する。
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