「人手不足」と外国人 (16)

「元日本語教師」訴訟が暴く「ベトナム偽装留学生」ビジネスの実態

執筆者:出井康博 2018年1月5日
エリア: アジア
K校から鈴木さんに送られたアルバイト関連の資料など(筆者提供)

 

 アジアの新興国から出稼ぎ目的で来日する“偽装留学生”の急増によって、彼らの受け入れ先となる日本語学校が「バブル」に沸いている。NHKの調査によれば、日本語学校の数は過去5年で200校以上も増え、全国で643校を数えるまでになった。既存校の拡大も相次ぎ、東京都内では定員2000人以上というマンモス校もある。そんななか、現場で苦悩しているのが日本語教師たちだ。

 日本語学校の多くで“偽装留学生”が溢れている。彼らは日本で少しでも多く稼ごうと、「週28時間以内」というアルバイトの制限に違反して働く。勉強などそっちのけで、夜のバイトに備え授業を睡眠時間にあてる。日本語など上達しなくても、学校は意に介さない。失踪せず、学費を支払ってくれる限り、自らのビジネスは安泰だからだ。こうした現実を前に、理想を持って日本語教師となった人たちほど葛藤を覚える。

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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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