サイバーウォー・クレムリン (9)

西側が最も恐れる「カスペルスキー」という男

執筆者:小泉悠 2018年1月11日
タグ: ロシア
エリア: 北米 ヨーロッパ
ロシアIT業界の寵児、エフゲニー・カスペルスキー氏 (C)AFP=時事

 

 ロシアのIT産業といえば、カスペルスキー社(Kaspersky Lab)の名前が真っ先に挙がるだろう。

 コンピュータ・エンジニアのエフゲニー・カスペルスキー(外国ではファーストネームを英語風の発音にしたユージン・カスペルスキーと名乗ることが多い)が立ち上げたこの企業は、独自開発したウイルス対策ソフトの販売によって急成長を遂げてきた。2016年の総売り上げは6億4400万ドル、ユーザー数は実に4億人以上にも及ぶ。最大のセールスポイントは、世界でもトップクラスとされるウイルス対策ソフトの性能で、世界中の警察やサイバー犯罪対策機関とも協力関係を結んできた。前回触れたロシアのインターネット関連インフラ国産化の試みにおいても、カスペルスキーはソフトウェア部門の旗手と呼ぶべき存在である(2017年11月20日「ロシア『ソフトウェア』の驚くべき『不都合な真実』」参照)。

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執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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