追悼:最後の「新儒家」霍韜晦と中国「統一戦線工作」の追想

執筆者:樋泉克夫 2018年7月3日
エリア: アジア
6月6日に北京で死去した、新儒家の霍韜晦さん(『百度百科』HPより)
 

 

 6月6日、北京で霍韜晦さんが亡くなった。享年78。

 霍さんの名前を聞いたことのある読者は、おそらく皆無に近いだろう。なぜ北京でという疑問はひとまず後回しにして、霍さんの思い出を綴っておきたい。

 初対面は、私が香港の中文大学新亜研究所に留学した翌年の1971年の半ばではなかったか。霍さんが京都大学か大谷大学の留学から戻ってきた頃だと思う。廊下を挟んで斜め向かいの研究室に押しかけては、質問やらムダ話で時間を過ごしたものだが、もちろん霍さんが私の研究室の戸を叩くことはなかった。本来の研究を忘れ、京劇に現をぬかし芝居小屋に日参しているような日本人学生に、尋ねることなどあろうはずがなかったに違いない。

カテゴリ: 社会 政治 カルチャー
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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