半導体は需給逼迫が長期化する見通しが強まるとともに、冷戦状態の米中両国の共通の弱点として、世界の半導体メーカーや装置、材料業界も巻き込んだ産業冷戦の最前線となった。米バイデン政権は最先端の半導体と生産設備の対中供給を封じることで優位に立ちつつあるが、米国自身の台湾、韓国依存の構造は続く。その中で、台湾のTSMCはスマホ、パソコンだけでなく、スーパーコンピューター、自動運転、暗号通貨など先端技術の根幹をも押さえるかつてない製造業となった。台湾、韓国だけでなく、米国、日本、欧州で進む半導体生産ラインへの投資は成功するのか、半導体入手に苦しむ中国は沖合200キロの距離にあるTSMCの工場群に手を延ばす誘惑に駆られないか、世界は半導体を巡る危険な時間にさしかかった。
米中ともに対外依存が脆弱性
80年前の1941年12月8日、日本は真珠湾奇襲攻撃とともに太平洋戦争に突入した。開戦決断の大きな要素となったのが、4カ月前の8月に始まった米国による対日石油禁輸だったことはよく知られる。当時の日本は石油需要の8割以上が軍需で、石油の在庫量、調達力が継戦能力を規定していたからだ。現代に置き換えれば、半導体が石油と同じ重みを持つ物資だろう。
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