中国に根を張る「西側文明との闘争」という世界観(2022年9・10月-1)

執筆者:API国際政治論壇レビュー(責任編集 細谷雄一研究主幹)2022年12月12日
中国にとってロシア・ウクライナ戦争は西側の「帝国主義の産物」 [2022年11月16日、G20首脳会議で全体会議に出席する中国の習近平主席(右)](C)EPA=時事
習近平体制3期目を各国メディアは悲観と批判で迎えた。その強権化への懸念の深さは、対中宥和的な姿勢を示すことが多かった韓国において左派系新聞でさえ政策転換の必要性を指摘することからも見て取れる。一方、新たな米国家安全保障戦略で脅威として名指しされた中国は「アメリカこそが世界分断の元凶」と反発するが、その認識の根底にはロシア・ウクライナ戦争も「西側文明を打倒するための構造的な闘争」と見るような、イデオロギー対立で規定された世界観があることに留意すべきだ。(第2部はこちらからお読みになれます)

1. 強権化する習近平体制

■「賛美」が溢れた中国政府系メディア

   2022年10月22日、中国共産党第20回全国代表大会が閉幕した。そこでは共産党の指導部となる第20期中央委員会の人事が明らかとなり、それは習近平の側近で固められ、中国がよりいっそう強権体制になる方向性が示された。中国政治の新しい動向に世界が関心を示した。

   ミシガン大学政治学部の洪源远准教授が『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄せた論稿では、これまで鄧小平が築き上げた改革開放時代が終わりを告げたことに注目する[Yuen Yuen Ang, “An Era Just Ended in China(中国では一つの時代が終わった)”, The New York Times, October 26, 2022]。すなわち、習近平総書記は、経済成長の重要性よりも国内外の脅威に対抗する「安全(security)」の確保を優先した。この論稿では、そのような方向性が中国経済に打撃を与え、世界不況をもたらしかねないと警鐘を鳴らす。そして、毛沢東時代の中国や冷戦時代のソ連の経験は、絶対的な政治権力を求めて軍事強国の道を進むことが、いかに悲惨な結果となるかを示していると論じている。

   それでは、3期目に入った習近平体制は、どのような外交を展開することになるのだろうか。当然ながらこの時期の中国のメディアは、習近平総書記の3期目スタートを歓迎し、その基本路線や思想を賛美する記事で溢れていてる。

   中国の王帆外交学院院長は、『環境時報』に寄せた論稿の中で、これからの中国外交が四つの方向へと進む可能性を提示する[王帆(Wang Fan)、「中国特色大国外交如何影响世界(中国の特色ある大国外交はどのような影響を世界に与えるのか)」、『环球网』、2022 年10 月20 日]。第1には、中国外交は時代の潮流を適切に理解して、世界の安定化のために貢献できる。第2に、中国は自らの発展を続けていくことで、世界経済の成長に貢献できる。第3には、「人類運命共同体」の構築により、人類文明の新しい輪郭を描くことができる。第4に、包括的な「新型国際関係」を積極的に構築することで、相互尊重、協力互恵、「人類運命共同体」構築を推進し、人類共通の価値を生み出すことができる。

   このように中国国内の政府系のメディアでは、党大会開催と習近平体制3期目の開始にあわせて、中国外交の今後の針路を示して、それを肯定的に高く評価する論調が見られた。

■中国に批判的な論調が増えた韓国

   一方で、習近平総書記のさらなる強権体制の確立と、経済成長の軽視とも見られる人事に対して、国際世論の反応は概して悲観的なもの、または批判的なものとなっている。

   たとえば仏『ルモンド』紙では「中国での権力強化に適応せよ」という社説で、西側諸国はこれから、外交的により傲慢で、軍事的により好戦的、経済的にはより閉鎖的で、イデオロギー的にはより内向きの中国と対峙することになる可能性が高いと論じる[Éditorial, “S’adapter au durcissement du pouvoir en Chine(中国での権力強化に適応せよ)” , Le Monde, October 24, 2022]。同紙は、中国を外から変革することは難しいし、中国国内では多くの市民が中国共産党の政策に反対する意志も手段も有していない。それゆえ、西側諸国は中国に幻想を抱くべきではないとした。かつての中国の経済成長、そして中国との国際協調への楽観的な空気はもはやそこには見られない。最近のフランスでは、中国の国家体制の強権化や、中国国内の人権侵害に批判的な記事が多くなってきている。

   同様にロンドン大学キングス・カレッジのペーター・ノイマン教授とイエール大学フェローのモーリッツ・ルドルフの二人も、このような中国政治の権威主義体制化を受けて、ドイツの『ツァイト』紙に寄せた論稿でこれまでの欧米諸国の対中政策を大きく転換していく必要性を主張する[Peter R. Neumann and Moritz Rudolf, “Wir müssen schnell umdenken!(我々は早急に考えを改めなければならない)”, Die Zeit, October 24, 2022]。これまで欧米諸国は、対中関与を継続することで、中国が内側から変化していくことを期待していた。だが、中国側からすれば「改革開放」とはあくまでも共産党体制を維持するための手段に過ぎず、その点を欧米諸国は見誤っていたのだ。経済的な相互依存を強めた結果、政治的な依存を深めたのは、中国ではなくむしろ欧米諸国の方であった。ノイマンとルドルフは、これからあらゆるレベルで、世界秩序をめぐって競争が激化していくことを予想する。対中政策を早急に転換しなければ、21世紀は中国の台頭を見るだけではなく、欧米諸国の衰退の歴史をも見ることになると指摘する。

 興味深いのは、韓国でも従来の対中政策を転換する必要性が論じられていることだ。これまでは中国への経済的な依存からも、さらには北朝鮮政策をめぐる協力の必要性からも、中国に対して宥和的な政策を示すことが多かった韓国で、対中認識が変容しつつある。

 たとえば、韓国の保守系『朝鮮日報』紙によれば、中国共産党政治局常務委員会が「習近平師団」一色となり、習近平体制が3期目に入ったのみならず、習近平個人の「終身執権」の道を開いた[[사설] ‘시진핑 독재’ 완성, 한반도에 닥쳐올 중국발 안보·경제 위기([社説]「習近平独裁」の完成、朝鮮半島に切迫する中国発の安保・経済危機)、『朝鮮日報』、2022年10月24日]。対外政策では「一帯一路」政策や強圧的な「戦狼外交」を続け、米中対立の深まりは対中経済依存の強い韓国にも負の影響を及ぼしている。習近平体制の強化は米中対立を増幅させ、それによって北朝鮮の核開発問題を解決することがよりいっそう困難となるであろう。中国に関してこれまでとは次元の異なる地政学的な危機が韓国にも迫っているため、この記事では国交樹立30年が経過した韓中関係を根本から再考するべきだと提唱する。

 そのような、中国への批判的な論調と、従来の対中政策を転換する必要性の指摘は、韓国の左派系の新聞にも見られた。『ハンギョレ』紙によれば、そのような中国政治の動向の帰結として、中ロ朝の3国間での協調がこれから強化されることになる[[사설] 중국 ‘시진핑 독주’ 시대 개막, 외교 과제 무거워졌다([社説]中国「習近平独走」の時代開幕、外交課題は重くなった)、『ハンギョレ』、2022年10月23日]。またそれは、北朝鮮の核問題や南北統一問題で、中国が韓国の立場を支持する可能性が低くなったことを意味する。中国とは最大限、対話と協力の可能性を摸索しながらも、これから韓国は中国への過度な経済依存を減らして、より多角的な外交を展開するべきだと指摘する。韓国の左派系の新聞においても明らかに、従来のような中国や北朝鮮との協力の重要性を繰り返す論調とは異なる認識が示されている。

 台湾でもそのような危機感が共有されている。国際政治学者で中央研究員社会学研究所研究員の呉介民は、中国共産党大会後の中国が進む三つのシナリオを想定する[呉介民、「解析習近平「登基」後3種路徑發展:新柏林圍牆就是台灣海峽(習近平の「即位」後、残された三つの選択肢-台湾海峡は新しいベルリンの壁になる)」、『報導者』、2022年10月25日]。第1は、中国が長期的な停滞に陥るシナリオである。そして第2は、中国の国内情勢が不安定となり、革命が起きるシナリオである。第3は、中国国内の不満や圧力をかわすための、対外侵攻の開始である。第1のシナリオでは、西側諸国がハイテク分野などでの中国とのデカップリングを進め、さらに中国国内で急激な高齢化が進むために、結果として中国は最終的に競争力を失っていくと想定する。このシナリオが進むと、米中冷戦は深刻化しながらも、中国が台湾を侵攻する可能性は高くないであろう。しかしながらも、そのようなシナリオでは、台湾が新たな「ベルリンの壁」になる。そして最後に、チベットや香港を例に挙げながら、中国共産党体制との約束をそのままうのみにして信じてはいけないと、呉介民は警鐘を鳴らしている。

 このようにして、党大会後の中国は、習近平体制がより強硬になり、同時に中国との国際協調がより困難になると予期されている。たしかに、11月中旬の米中首脳会談や日中首脳会談を通じて一定程度の緊張緩和へ向けた外交的努力が示された。だが、そのことが上記のような疑念や悲観を払拭することは難しいであろう。

2. 台湾問題とアメリカの戦略

■戦争か、平和か、という単純化は危険

 はたして中国は、近い将来に台湾の武力統一に向かうのであろうか。そしてそのことが米中間の戦争に発展して、日本も有事に直面することになるのだろうか。この点については、そもそも習近平総書記自ら、武力を用いた台湾統一というオプションを放棄していないことを明らかにしている。

『環球時報』紙の社説は、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が繰り返し台湾の危機について言及していることを牽制する[「社评:脱离一个中国谈“和平”,无异在台海煽战火(社説:一つの中国原則から離れて平和を語ることは、台湾海峡の戦火を煽ることに等しい)」、『环球网』、2022年10月28日]。同紙によれば、台湾海峡の現状変更を試みているのは、アメリカと台湾独立勢力である。そもそも両岸の統一は、台湾を含めた「中国人共通の願い」であったはずだ。ところが、アメリカ中間選挙の際には、政局的な理由からいずれの政党も台湾海峡の安定を損なうような挑発を続ける。同紙は、これこそが「覇権国家」の典型的な挑発であると非難する。そして、台湾では民進党および分離独立主義者たちが、ワシントンの自作自演のシグナルの「中毒」になってしまったと指摘する。この社説では、アメリカを「覇権主義」と位置づけ、台湾独立分子と外部干渉勢力の結託により、台湾が間違った道に進もうとする動きを批判し、牽制している。

 CIAで長年東アジア分析官として勤務をしてきたジョン・カルバー大西洋評議会シニア・フェローは、実際に中国が台湾に侵攻する際には事前にいくつかの兆候が見られるだろうと指摘している[John Culver, “How We Would Know When China Is Preparing to Invade Taiwan(中国がいつ台湾侵攻の準備をしているか知るためには)”, Carnegie Endowment for International Peace, October 3, 2022]。中国が国内で大規模な動員を行うのであれば、それはすぐに分かるはずである。とりわけロシアのウクライナ侵攻の困難を見て、中国がより周到に、そしてより国家総体としての侵略の準備をするであろうから、その動向を事前に察知することは可能だ。これを踏まえた上でカルバーは、中国の統一戦略は、軍事的要素だけでなく「経済、情報、法律、外交」などの要素も含むため、「戦争か、平和か、という単純化は危険だ」と指摘する。これは重要な点であろう。そもそも、明確な「侵略」と認定できなければ、国際社会が対抗措置をとることは難しい。そのようなグレーゾーン事態への対応能力が、鍵となるであろう。

■対中穏健派が捉える台湾問題の現状

 台湾危機をめぐり、コロンビア大学のトーマス・クリステンセンらの著名な中国専門家が連名で『フォーリン・アフェアーズ』誌に台湾危機に対処するための提言を寄せている[Thomas J. Christensen, M. Taylor Fravel, Bonnie S. Glaser, Andrew J. Nathan, Jessica Chen Weiss, “How to Avoid a War Over Taiwan: Threats, Assurances, and Effective Deterrence(台湾をめぐる戦争を回避する方法―威嚇と保証、そして効果的な抑止)”, Foreign Affairs, October 13, 2022]。そこでは、それまでの戦略的曖昧性を戦略的明晰性に転換することを求めるような主張を牽制して、むしろ米中台がそれぞれ実効的に抑止されている重要性を指摘している。他方で、蔡英文政権成立後、この抑止の「三角関係」が弱まっており、抑止力が低下している。台湾の防衛力に大きな制約があるにもかかわらず、台湾独立を求める声は強まっている。そのため、アメリカが台湾に信頼できる保証を提供することが重要であり、また台湾の独立ではなく平和と安定を優先することが必要となる。さらにこの論考では、アメリカ政府高官が台湾を「国家」と呼ぶなど、シンボリックなパフォーマンスを繰り返すことを慎むべきだと言及する。

 台湾問題をめぐって、米中間の緊張緩和の必要を説く声も見られた。たとえば、コーネル大学のジェシカ・チェン・ウェイスは、米中対立が不自然なほどに高まっているものの、中国が台湾に軍事力を行使する可能性を過大評価すべきでなく、米中双方が緊張緩和のための努力をするべきだと論じている[Jessica Chen Weiss, “America and China Don’t Need to Knock Each Other Out to Win(米中は勝利のために互いを叩きのめす必要はない)”, The New York Times, October 19, 2022]。中国政府も国内問題が山積しており、そのような場合は対外行動が慎重になる傾向も強まるだろう。米中双方が、それぞれの国内問題に対処することを優先するべきだ。それゆえ、アメリカは台湾への象徴的な関与の水準を低下させ、むしろ台湾とは経済関係を強化することが重要だ。このウェイスのような対中穏健派の声は、バイデン政権下でもおそらくは一定数が存在しているのだろう。だからこそ、11月14日のジョー・バイデン大統領と習近平国家主席との米中首脳会談で、緊張緩和を求める姿勢が見られたのではないか。

■新たな米国家安全保障戦略をめぐる議論

 アメリカ政府は、2022年10月に、ウクライナ戦争の勃発などで発表が遅れていた新しい国家安全保障戦略(NSS2022)を公表した。そこでは、新たな地政学的脅威として中国やロシア、さらにはトランスナショナルな脅威を指摘している。

 ブルッキングス研究所では、この戦略文書の公表から間もない時期に、その内容を分析、評価する報告書を発信している[Shadi Hamid, et al., “Around the Halls: Assessing the 2022 National SecurityStrategy(研究員らの意見―2022年国家安全保障戦略の評価)”, The Brookings Institution, October 14, 2022]。そこでは、複数の専門家がそれぞれの専門地域や分野から分析している。そして、前回の文書からあまり大きな変化がないながらも、新しいNSSの内容に比較的高い評価を与えている。共同執筆者の一人であるスザンヌ・マロニーは新しいNSSを論評する中で、対外政策と国内基盤を結びつけて考えていることや、民主主義対権威主義という基本的な構図を継承することなどをその特徴として指摘している。

 他方で、グランド・ストラテジーなどを研究し、その論考が注目されているジョンズ・ホプキンズ大学のハル・ブランズ教授は、現在アメリカが中国、ロシア、そしてイランの脅威を一度に対処しようとしていて、そこに大きな制約があることを指摘する[Hal Brands, “Can the US Take on China, Iran and Russia All at Once?(アメリカは中国とイラン、そしてロシアに一度に対応することができるのか)”, Bloomberg, October 16]。それはまるで、1930年代にドイツ、イタリア、そして日本という異なる三つの国家の脅威に対峙したことと同様であり、アメリカは一つ以上の脅威に同時に対処することが得意ではない。ブランズによると、また、これらの問題を克服するためには、コミットメントを縮小するか、あるいは国防費を増加させるかをせねばならないが、現在はそのどちらも行われていない。それに対する解決策として、ブランズは「順次戦略(Sequencing Strategy)」を選択する必要を論じ、一つの地域の危機に対処しながら、もうひとつの地域の危機の進行を遅らせることが重要だという。

 そのような見解とは対照的に、あまりにもバイデン政権の対外政策が抑制的であって、エスカレーションをおそれるあまり十分に脅威に対応できていないという批判もある。

 共和党政権で政策決定に関与して、現在は保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)で研究を統括するコリ・シャケは、形式的に明らかにしている外交目標と、実際に予算を伴って政権内部で論じられている本音との間に大きな乖離が見られる点を批判する[Kori Schake, “Biden’s Cautious Foreign Policy Is Imperiling the United States(バイデンの慎重な外交政策が米国を蝕む)”, The New York Times, September 26, 2022,]。そして、太平洋地域で展開する米軍の戦力は、中国軍のそれと比較して劣っており、予算も十分に確保されていない。「中間層のための対外政策」という民主党政権のスローガンが、軍事費に十分な資源を配分することを妨げていると指摘するのだ。

 たしかに、レトリックでは中国やロシアに対抗的で、強硬な姿勢を示しながらも、実際の資源配分の領域で十分な対応をしていないという批判は、シャケ以外からもなされている。

■中国は「西側諸国とのイデオロギー的な対立」を一層強調

 中国のメディアは、このようなバイデン政権が発表した新しいNSSをどのように論評しているのだろうか。

『環球時報』は10月14日付の社説で、このアメリカの新しい戦略文書で中国が国名を挙げて批判され、警戒されていることに反発している[「社评:美国的新国安报告,缺乏新意却充满恶意(社説:アメリカの新NSSは新しさも無く、悪意に満ち溢れている)」、『环球网』、2021年10月14日]。また、それを「冷戦時代のゼロサム的思考から逃れられていない」と指弾して、アメリカの冷戦思考が世界の分裂をもたらし、国際社会が結束して対処すべきグローバル・イシューズへのアメリカの無力感を示していると指摘した。

 中国が国際社会の結束と互恵的協力を促進するのに対して、アメリカが世界の分断と混乱を招いているという対比は、これまでも中国のメディアが継続的に提示してきた構図である。そのような中国のプロパガンダが一定程度の影響力を有していて、いわゆる「グローバル・サウス」でのアメリカの影響力と信頼の低下に繋がっているとも言えるだろう。

 そのような構図による国際情勢の描写は、たとえば『環球時報』に掲載された10月11日付の論稿でも同様に見ることができる。そこでは、中国人民大学国際関係学院院長の杨光斌が、ウクライナ戦争の原因は西側の民族主義、拡張主義、資本権力を基盤とした帝国主義であると論じて、一方的にアメリカなどの西側諸国を非難する[杨光斌(Yang Guangbin)、「从俄乌冲突观察世界政治的本质(ロシア・ウクライナ戦争から国際政治の本質を観察する)」、『环球网』、2022年10月11日]。そして、これまでの数世紀、アングロ・サクソン勢力が世界システムを構築してきたと、歴史をふり返る。それ以外の勢力の大国の台頭を、アングロ・サクソン人が頂点として君臨するシステムへの脅威と見なして、拒絶しようとしてきたというのだ。

 これは、戦前の日本の反英米的で、アジア主義的な主張とも親和性があるようにも見える。また、従来に比べて中国は、西側諸国とのイデオロギー的な対立を強調して、協調の可能性を否定している姿勢が強まっているようだ。そして、西側の野蛮な文明の性質は不変であり、帝国主義こそが世界の不安定性の源泉となっていると主張し、覇権主義が中華民族の偉大なる復興の障害であることこそがウクライナ戦争から観察できる「国際政治の本質」と論じる。このような視点は、現在の中国共産党の指導部の世界観とかなりの程度親和性があるのではないだろうか。換言すれば、中国政府がこのような世界観を抱いているとすれば、アメリカ政府が米中間の緊張緩和を進めることは容易ではないであろう。というのも、それが強固なイデオロギー対立によって規定されているからだ。

 だとすれば、ウクライナ戦争を、ロシアとウクライナの間の戦争として狭い視野から論じるのではなく、中国がそのような西側文明を打倒するための長期間にわたる構造的な闘争と見ていることにも留意することが重要であろう。だからこそ、中国政府はこれまで、水面下でロシアの戦争を支援する姿勢を継続してきたのだろう。 (続く)

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。