「圧倒的指導者」に近づいた習近平は「鄧小平の老練」を手にできるか

執筆者:宮本雄二 2022年10月31日
タグ: 中国 習近平 台湾
エリア: アジア
最大の挑戦は経済から来る可能性が高い[新たな最高指導部とともに報道陣に対応する習近平総書記(先頭)、その後ろは総理就任が確実視される李強氏=10月23](C)AFP=時事
習近平3期目は「鶴の一声」でものごとが決まっていくだろう。だが、危機感と綱紀粛正だけで固めた権力は脆く、その完全な確立は今後の執政の実績次第だ。「改革開放」の政策体系を整えながら、実践の中で鄧小平理論を確立して行った鄧小平の老練さと巧妙さが、特に経済に難問山積の新指導部には不可欠になる。

 10月に開催された中国共産党第20回党大会の結果は、中国共産党の政治が大きな転換を遂げつつあることをはっきりと示した。

 毛沢東時代(1949~76)の混迷を鄧小平が克服し、鄧小平時代(77~97)を築いた。鄧小平は、92年の南巡講話を経て改革開放政策を不動のものとし、奇跡の経済成長を実現した。鄧小平の政策を実施したのが江沢民(89~2002)と胡錦濤(02~12)であった。改革開放政策が定まり、統治の制度化が進んだ。筆者も含めて多くのチャイナ・ウオッチャーたちは、そういう形で出来上がった統治システムと、その背景にある権力構造や人事の仕組みをいわば与件として習近平政権を眺めてきた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二(みやもとゆうじ) 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日本アジア共同体文化協力機構(JACCCO)理事長、日中友好会館会長代行。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』などがある。
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