饗宴外交の舞台裏 (182)

「ミッテランの女料理人」に向けられた「嫉妬」

執筆者:西川恵 2013年7月22日
タグ: フランス 日本
エリア: ヨーロッパ
 当時を振り返るデルプシュさん
当時を振り返るデルプシュさん

 フランスの女性料理人のダニエル・デルプシュさん(70)が故ミッテラン大統領(在任1981-95年)に請われ、初の女性料理人としてエリゼ宮入りしたのは88年。2年間、大統領専属の料理人として腕を振るった。昨秋、フランスで彼女のエリゼ宮の体験が映画化され、9月には日本でも『大統領の料理人』の邦題で公開される。デルプシュさんに話を聞いた。

 

料理長との確執

 パリ特派員時代、私はフランスの饗宴外交を取材するため、エリゼ宮にかよった。92年から93年にかけてで、デルプシュさんは去った後だ。厨房では約30人の料理人が働いていたが、すべて男性。ジョエル・ノルマン料理長(当時)に「女性料理人はいないのですか」と聞くと、「女性は必要ない」とそっけなかった。デルプシュさんの名前も出ず、彼女がいたことさえ知らなかった。いまとなれば分かる。料理長は彼女のことに触れたくなかったのだ。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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