ロシアへの接近をほのめかして牽制するエジプト首相

 「なぜアメリカはエジプトへの援助を切らないのか」と批判する声は米国内にも国際社会にもある。しかしスエズ運河を押さえて、イスラエルとサウジアラビアに隣接し、この地域で格段に大きい人口を擁しているエジプトという国に影響力を行使することは非常に難しい。このことを感じ取るための最初の手掛かりとして、例えばこのインタビューを見るといいだろう。暫定政権のベブラーウィー首相は、ABCの看板キャスターであるマーサ・ラダッツのインタビューで、「忘れないでくれ。エジプトはロシアの軍事援助で数十年も生き延びた。命を取られるわけじゃない。状況が変わっても生きていける」と開き直った。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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