首相の「虚言」に無批判なマスメディアの罪

執筆者:塩谷喜雄 2013年9月22日
エリア: 日本
 現地でも安倍首相の「妄言」は繰り返された (C)時事
現地でも安倍首相の「妄言」は繰り返された (C)時事

 「状況はコントロールされている」――。

 安倍晋三首相が9月8日(日本時間)にIOC総会で語った虚言(福島の被災者にとっては暴言)の持つ深刻な意味合いについて、日本の大手マスメディアは、問題をすり替えることで、見て見ぬふりを通すつもりらしい。

 9日付の全国紙は社説まで、五輪招致万歳の提灯記事で埋まった。慶事である。大いに寿ぎ、論じていい。薄気味悪いのは、翼賛社説の中に、取ってつけたように、それも判で押したように各紙同じキーワードを使って、奇妙な御託宣が紛れ込んでいることだ。いわく、首相のIOC発言で事故原発の汚染水対策は「重い国際公約」となったのだから、五輪開催に浮かれずに、政府と東電は責任を肝に銘じるべし、と。何やら厳かに。

 首相がIOCで滔々と述べた内容は、

① 状況はコントロールされており

② 汚染水は専用港の0.3平方キロの港湾内で完全にブロックされて外海には出ておらず

③ 周辺地域の放射線被曝による人間の健康問題は、これまでも、現在も、将来もないことを保証する

 の3点に要約される。

 この中で、首相は何か国際公約をしたのだろうか。①も②も皆さまご懸念のようなリスクは存在していませんという、いささか傲慢な現状規定である。約束ではない。③では何かを約したようにみえるが、福島原発事故では一般公衆の被曝による健康障害は将来も存在しないと、科学的には全く根拠のない無責任な断言をしているに過ぎない。

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執筆者プロフィール
塩谷喜雄 科学ジャーナリスト。1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、97年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。2010年9月退社。
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