国際論壇レビュー
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安倍首相「ダボス発言」で世界が抱いた警戒心

会田弘継
 ダボス会議の基調演説はソツなくこなしたのだが……      (C)AFP=時事
ダボス会議の基調演説はソツなくこなしたのだが……      (C)AFP=時事

 かつての大英帝国ならいざ知らず、欧州のただの一国になった英国の市民にとっては、地球の反対側の紛争の火の粉が降りかかったようで、仰天だっただろう。

「軍国主義は日本に亡霊のようにとりついたヴォルデモート卿だ」――。1月2日付の英紙『デーリー・テレグラフ』は、劉暁明・駐英中国大使の寄稿「大戦で勝利したのは中国と英国だ」を掲載した。ヴォルデモート卿は、映画化もされてきたベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズに登場する闇の帝王である。

 ヴォルデモート卿の魂は7つの分霊箱に分けて入っている。そのすべてを破壊しない限り殺せない。劉大使は、靖国神社を、日本軍国主義の分霊箱のひとつにたとえる。【China and Britain won the war together, The Daily Telegraph, Jan.2

 正月早々(という感覚が英国人にあるかは別として)、これを読んだ英市民は、つい数日前に安倍晋三首相が靖国神社を参拝したニュースを思い出し、肯いたに違いない。大使の寄稿はまた、大戦中の日本軍の英兵捕虜虐待を描く公開間近の映画を持ち出し、ナチスの手口に倣って憲法を改正しろと言った麻生太郎副総理にも言及する。軍国主義に回帰する危険な日本と世界は対峙するべきだ、という。論の展開は巧みだ。さすが共産党。プロパガンダのうまさには舌を巻く。

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執筆者プロフィール
会田弘継
会田弘継 青山学院大学地球社会共生学部教授、共同通信客員論説委員。1951年生れ。東京外国語大学英米科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。2015年4月より現職。著書に本誌連載をまとめた『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書)、『戦争を始めるのは誰か』(講談社現代新書)、訳書にフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』(講談社)などがある。
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