吉田調書を読み解く(上)「貞観地震」への過剰反応

 朝日新聞社は遅まきながら記事を取り消し、木村伊量社長が謝罪したが…… (C)時事
朝日新聞社は遅まきながら記事を取り消し、木村伊量社長が謝罪したが…… (C)時事

 9月11日に公開されたいわゆる「吉田調書」には、驚天動地の新事実も、闇を照らす秘密の暴露もない。ここから無理やり特ダネを“捏造”した朝日新聞への大批判は、当然の帰結だろう。調書の作成を主導したのは、政府の「事故調査・検証委員会」の事務局内で最大勢力を占めた検察官たちで、一見すると、冗長で膨大な「羅列」でしかない吉田調書だが、あらかじめ設定された「検察的シナリオ」のにおいが、紙背からそこはかとなく漂ってくる。

 ざっくばらんに、時にべらんめえ口調で、率直に答える吉田昌郎所長(当時、昨年7月死去)の言葉の端々から伝わってくるのは、語れない事実の重さだ。世界に類例のない隣接する原発4基の連続過酷事故。自然災害が発端とはいえ、事故前の「不備」や事故後の「不始末」に話が及べば、企業責任が浮上する。

 断片的な詳述と一般論の繰り返し、核心を迂回した冗長な羅列にも、いくつかの破綻が存在する。そこを読み解くと、十数万人の平穏な日常を奪った福島原発事故の「構造」がおぼろげに見えてくる。

 

「総長」も「総理」も「おっさん」

 吉田所長は、論旨不明瞭な妙に誘導的な質問にも、一貫して丁寧に答えている。その中で、特定の人物を「あのおっさん」呼ばわりして、声を荒らげる場面が、2カ所ある。

執筆者プロフィール
塩谷喜雄 科学ジャーナリスト。1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、97年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。2010年9月退社。
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