原発事故から4年:地元漁協「汚染水流出」への怒り

執筆者:寺島英弥 2015年3月17日
エリア: アジア

 東日本大震災が起きてから4年となる3月11日を、福島県相馬市の漁業者たちは収まらぬ憤りとともに迎えた。本来ならこの週、コウナゴ(小女子)の漁が相馬沖で始まる予定だったが、突然の事態で先送りになったのだ。

 コウナゴは塩ゆで、天日干しされ、香ばしい「春告げ魚」として食される。地元産は「そうま小女子」として郵便局から全国に出荷され、人気を呼んだ。が、福島第1原子力発電所事故からひと月足らず後の2011年4月5日、東京電力が、原発構内の汚染水1万1500トンを同県漁連へのファクス1枚の通知で海に放出して以来、他の魚種とともに漁が自粛された。試験操業は、安全が確認された魚種のみ限られた量を週1回捕り(現在58魚種)、厳しい検査を経て地元や築地などに出荷している。市場の競りに掛けられる正規のルートでなく、消費者の信頼を積み重ねる試験流通。本操業の再開が漁業者の悲願だ。

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執筆者プロフィール
寺島英弥(てらしまひでや) ローカルジャーナリスト、尚絅学院大客員教授。1957年福島県相馬市生れ。早稲田大学法学部卒。『河北新報』で「こころの伏流水 北の祈り」(新聞協会賞)、「オリザの環」(同)などの連載に携わり、東日本大震災、福島第1原発事故を取材。フルブライト奨学生として米デューク大に留学。主著に『シビック・ジャーナリズムの挑戦 コミュニティとつながる米国の地方紙』(日本評論社)、『海よ里よ、いつの日に還る』(明石書店)『東日本大震災 何も終わらない福島の5年 飯舘・南相馬から』『福島第1原発事故7年 避難指示解除後を生きる』(同)、『二・二六事件 引き裂かれた刻を越えて――青年将校・対馬勝雄と妹たま 単行本 – 2021/10/12』(ヘウレーカ)、『東日本大震災 遺族たちの終わらぬ旅 亡きわが子よ 悲傷もまた愛』(荒蝦夷)、3.11以降、被災地で「人間」の記録を綴ったブログ「余震の中で新聞を作る」を書き続けた。ホームページ「人と人をつなぐラボ」http://terashimahideya.com/
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