5年目を迎えた「3.11」(下)「国」と「東電」に翻弄される被災民

執筆者:吉野源太郎 2015年3月19日
エリア: 日本

「浪江住民のADRへの申し立ては、損害賠償請求の枠を超えて政治運動化しているのではないか」

 東京電力に近い立場の法律家は、こう言って福島・浪江町を批判する。

 原発ADR(裁判外紛争解決手続き)とは、福島第1原発の事故で受けた住民の損害賠償をできる限り早く実現させるために、訴訟や東京電力への直接請求以外の新たな窓口として、国が設置した制度である。

 被災者が原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)に賠償請求を申し立てると、弁護士の仲介委員が申し立て人の事情を聴取し、国の原子力損害賠償紛争審査会が決めた「指針」に照らして和解案を決め、東電と被災者に提示する仕組みだ。きちんと機能すれば、訴訟や東電に直接請求する方法よりも、被災者が短期間で簡便に賠償を受けられる利点があるとされる。

 この制度ができた背景には、原発被災者が膨大な数にのぼるという今回の事故の特徴がある。なかには農民や高齢者も多く、訴訟に必要な手続きや証拠集めなどは事実上難しい。高齢者であれば、避難生活の中で消耗して、やがては生命の危険にさらされることもあるだろう。手っ取り早く賠償金を手にできることは現実問題としてきわめて大事なことだ。

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執筆者プロフィール
吉野源太郎 ジャーナリスト、日本経済研究センター客員研究員。1943年生れ。東京大学文学部卒。67年日本経済新聞社入社。日経ビジネス副編集長、日経流通新聞編集長、編集局次長などを経て95年より論説委員。2006年3月より現職。デフレ経済の到来や道路公団改革の不充分さなどを的確に予言・指摘してきた。『西武事件』(日本経済新聞社)など著書多数。
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