中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(47)

世界金融危機で湾岸ドバイが岐路に立つ

池内恵
執筆者:池内恵 2008年11月号
カテゴリ: 国際 金融
エリア: 中東

 米国発の金融危機は、西欧や日本だけでなく、ロシア、インド、中国といった新興市場にも急速に波及している。それでは中東にはどのように影響を及ぼしているのだろうか。特に関心を引くのが、GCC(湾岸協力会議)諸国、つまりペルシア湾岸産油国の新興市場である。特にアラブ首長国連邦(UAE)、その中でも先行して発展するドバイへの影響が注目される。 ドバイ市場についての見通しは、「投資情報」として高い関心を集めるが、ここではそのような情報提供は意図していない。将来の中東政治の姿をどのようにとらえるか、という問題が筆者の主要な関心事である。中東政治の今後の展開の中で、ドバイに象徴される経済発展モデルが持続しうるか、中東地域全体にどのような影響を及ぼしていくのか。ドバイを中心とした湾岸諸国の開発ブームによって、中東の重心が、湾岸地域に決定的に移ったとする見方が広がるが、この見方はどの程度妥当性をもつのか、注視しておきたい。 開発ブームに沸く湾岸産油国を、試みに「新しい中東」と呼んでみよう。対比して、エジプト、イラク、シリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダンといったこれまでの中東政治の中心は、「古い中東」ということになる。こちらは十九世紀末から二十世紀を通じて、産業化による経済発展と国民国家建設を目指してきた。人口が多く、文化や歴史の厚みを持ち、古くは古代文明や世界宗教を、近代においては民族主義やイスラーム主義をはじめとしたイデオロギーを生み出してきた知的発信源である。イラクを除けば産油国・資源産出国とは言えず、教育と労働による近代化の努力を試みてきた。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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