「戦勝70年式典」で後退する日露領土交渉

 ロシアが主催した5月9日の対独戦勝70周年式典は、西側諸国首脳がウクライナ干渉に抗議する形でボイコットし、盛り上がりを欠いた。式典で目立ったのは、中国の習近平国家主席が主賓扱いされ、プーチン大統領が演説で「日本軍国主義」に言及したことだった。大戦の結果を重視する姿勢が、北方領土交渉の停滞や日露関係の後退につながりそうだ。

 

60周年は和解強調

 筆者は2005年の戦勝60周年式典をモスクワで取材したが、60周年はブッシュ米大統領ら60カ国前後の首脳が顔をそろえ、小泉純一郎首相ら日独伊の敗戦国3首脳も参列、派手でなごやかなイベントとなった。赤の広場の式典では、プーチン大統領の両脇にブッシュ大統領とシラク仏大統領が並び、胡錦濤国家主席は比較的地味な扱いだった。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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