「戦勝70年式典」で後退する日露領土交渉

名越健郎
執筆者:名越健郎 2015年5月12日
エリア: ロシア

 ロシアが主催した5月9日の対独戦勝70周年式典は、西側諸国首脳がウクライナ干渉に抗議する形でボイコットし、盛り上がりを欠いた。式典で目立ったのは、中国の習近平国家主席が主賓扱いされ、プーチン大統領が演説で「日本軍国主義」に言及したことだった。大戦の結果を重視する姿勢が、北方領土交渉の停滞や日露関係の後退につながりそうだ。

 

60周年は和解強調

 筆者は2005年の戦勝60周年式典をモスクワで取材したが、60周年はブッシュ米大統領ら60カ国前後の首脳が顔をそろえ、小泉純一郎首相ら日独伊の敗戦国3首脳も参列、派手でなごやかなイベントとなった。赤の広場の式典では、プーチン大統領の両脇にブッシュ大統領とシラク仏大統領が並び、胡錦濤国家主席は比較的地味な扱いだった。

 小泉首相ら敗戦国3首脳は照れくさそうだったが、ロシア側は式典に臨んだ3首脳に気配りしていた。プーチン大統領は演説で、「ファシズムに対する勝利を自分たちだけの勝利とは思わない。米英仏など連合国の支援を忘れない」と強調、「独露の歴史的和解は戦後欧州の価値ある成果であり、国際社会の見本だ」とドイツを持ち上げていた。「すべての国が独自の発展の道を選ぶ権利を持つ」と暗に戦後の東欧支配を反省し、アジアの戦争に触れることもなかった。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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