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アフリカの小国「ジブチ」に中国初の海外軍事基地

 エチオピア、ケニア、タンザニアなど東アフリカ諸国の空港に到着すると、入国審査所で大声を出しながら書類に記入する中国人の一団をよく目にする。いずれも観光客ではなく、出稼ぎ労働者だ。なかでも最近とみに中国人の流入が加速しているのが、アフリカ大陸北東部の小国ジブチだ。日本の海上自衛隊が海賊対処活動のために、護衛艦2隻と、哨戒機P-3Cを2機派遣している、あのジブチである。

 

高まる中国海軍の存在感

 

 中国が初の海外軍事基地を、このジブチに建設することが5月9日前後に明らかとなり、中国の新たな海外戦略ではないかと耳目を集めている。中国によるジブチの軍事基地化は、海、空、陸の3方面から行われる可能性があり、事実、その整備が着々と進められている。
 その第1は中国が常設の軍港を、アデン湾に面した北部のオボックに建設し、中国海軍のフリゲート艦や補給艦が自由に寄港できる後方支援の拠点作りを行うことである。ジブチ政府と中国政府は2014年2月、中国海軍の艦艇がジブチに寄港できる協定を締結しており、すでに中国海軍の艦艇は補給目的で寄港している。これを飛躍的に進化させ、中国海軍が恒常的に寄港し、停泊できる軍港を建設することで両国は実質的に合意した模様で、ジブチのゲレ大統領はそれを「歓迎する」と述べている。
 中国海軍はアデン湾で海賊対処のためにフリゲート艦を派遣、アデン湾からスエズ運河を目指す民間商船を護衛する任務に従事してきた。サウジアラビアなど湾岸諸国がイエメンを空爆した際に、これらのフリゲート艦がイエメンに滞在していた中国人や外国人を緊急脱出させ、観光地ソコトラ島からは日本人も救出している。また黒海や地中海ではロシア海軍と合同軍事演習「海上連合2015」を行うなど、中国海軍のプレゼンスは飛躍的に高まっている。中国海軍は中東・アフリカ地域での本格的な活動拠点として、ジブチを選んだことになる。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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