フランシスコ法王が「環境問題の回勅」で見せた「2つの顔」

 ローマ法王フランシスコ(本名・ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ)は、2013年3月のコンクラーベ(法王選出会議)で、退位したベネディクト16世の後任法王に選ばれて以来、バチカンの改革を掲げ、高い人気を誇る。それだけに、リベラル派からは過剰ともいえる期待が寄せられ、保守派からは反発の声も上がる。
 そうした中、フランシスコは、カトリック教会の指針を示す「回勅」を6月18日に発表した。主題は環境問題についてだが、それに関連づけて社会、経済など幅広い問題に言及している。受胎調整への反対など「性と生」の問題では、カトリック教会の伝統的な考えに変更を加えない方針を鮮明に打ち出す一方、格差社会の解消を求めて金融界などを厳しく批判する。「保守とリベラルのどちらが真のフランシスコなのか」という戸惑いを生む一方、「教会の教え堅持と、社会正義を求めることでバランスを取るというフランシスコらしいもの」(バチカン関係者)と、回勅で示された二面性を肯定する意見もある。

環境問題の守護聖人「フランシスコ」

「フランシスコ」という法王名は、13世紀、イタリア中部アッシジを拠点に活動し、徹底した無所有・自己放棄を実践した「アッシジのフランシスコ」から取ったものだ。イエズス会出身であるのに、他の修道会の創始者の名を法王名に選ぶという異例の行動を取ったのは、高位聖職者が虚飾に走ったり、出世競争したりするバチカンの現状を改革する範をアッシジのフランシスコに求めているからだ。実は、アッシジのフランシスコには、「動物と話が出来た」という言い伝えもあり、カトリック教会では、環境問題の守護聖人としている。それだけに、今回の回勅にフランシスコは力を入れ、アッシジのフランシスコの「太陽の賛歌」の中の言葉「ラウダート・シ」(主が称えられますように)とのタイトルが付けられた。
 回勅は、246項にわたる。「毎年、数千種もの動植物が消滅している」が、その原因の大多数は、「人類の活動に関連している」と指摘。「皆の共通の家」を保全し、責任を持ってその美しさを守るために方向性を変えるという、「環境的回心」を呼びかけている。

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執筆者プロフィール
秦野るり子 1957年東京生れ。82年 読売新聞社入社。経済部に配属され、農水省、流通業界、通産省(現経産省)、日銀などを担当。89年に国際部へ異動。ワシントン、ジャカルタ、ローマ特派員、国際部デスクなどを経て2008年から調査研究本部主任研究員。コロンビア大学ジャーナリズム大学院客員研究員、カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院客員講師も務めた。著書に「バチカン」(中央公論新社)など。
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