「遊民経済学」への招待
「遊民経済学」への招待(9)

夏は福島競馬に通う理由

吉崎達彦

 日曜日の午前10時半、福島駅に降り立ったら、東口前の温度計が36度を示していた。予想していたこととはいえ、暑い。

福島駅の構内。この時期はやっぱり特別なんです。

 全く知らなかったのだが、7月12日は福島市議会選挙の投票日であった。しばし駅前で巨大な選挙ポスターとにらめっこするも、何が主要な争点であるのかは見えてこなかった。おそらく4年前は、震災からわずか3カ月後の市議会選挙で、いろんな情念が飛び交った熱い選挙であったことだろう。

 現地に着いたら、まずはちょっとだけ観光を。今年の目的地は、旧日本銀行の支店長宅である「御倉邸」と決めていた。ちょうど福島県庁の裏手当りに、古い日本家屋がキレイに保存されている。駅からはぶらぶら歩いて約15分であった。

御倉邸の入り口。

 支店長宅は昭和2年に建てられた。戦前の日本銀行の支店長宅で現存するのは、ここと新潟だけだそうである。維持費がかかり過ぎるということで1999年に日銀が手離し、今は福島市がコミュニティ活動に使える公園として管理している。まことに太っ腹なことに、入場料はタダである。
 中に入ると、とにかく和室の数が多いので驚く。まだ全国的にホテルが少なかった時代、日銀の支店長宅とは財界人が集まって議論をしたり、食事したり、どうかすると寝泊りする場所でもあったのだそうだ。おそらくは地域経済において、司令塔的な役割を果たしていたのであろう。
 和室に腰を下ろして外を眺めると、端正に手入れされた庭の向こう側には阿武隈川が流れていて、7月の日差しを浴びて水面がキラキラと光っている。ああ、そうなのか、福島市というのはこの水運が作った街であったか、と急に納得した。

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執筆者プロフィール
吉崎達彦
吉崎達彦 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
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