「遊民経済学」への招待
「遊民経済学」への招待(15)

若気の至りの海外カジノ経験談

吉崎達彦

 ラスベガス、マカオ、ソウル、オークランド、シドニー。若い頃は海外でチャンスがあるたびに現地のカジノを訪ねたものである。
 忘れがたい記憶がある。会社の同僚5人で、「それだけ」を目的にして週末に訪ねたソウルのウォーカーヒルのカジノである。昼間は少しだけソウル市内観光をして、当時はまだ残っていた日本総督府を訪ねたりもした。が、一同、気分は上の空である。晩飯を食って、夜はホテルに戻って勝負。当時の為替レートは1円が7ウォンくらいであったと思う。1万ウォン(1500円くらい)のチップをじゃらじゃらさせながら、長いながい夜が始まった。

 最初は軽くルーレットで遊んで、それからブラックジャックを「勉強」してみた。ブラックジャックのカードを引く、引かないは、最初に2枚のカードが配られた時点でセオリーが決まっている。あれを「勘の勝負」だと思っている人は、悪いけど負け組である。
 例えばブラックジャックのルールでは、同じカードが2枚来たら「スプリット」をコールしてカードを2つに分けることができる。が、無条件で分けていいのはAと8のときだけ。特に絵札2枚をスプリットするのは愚の骨頂である。20点の組み合わせを、敢えて10点ずつに分けるギャンブラーは、「カモ」「ど素人」を絵に描いたような存在である。
 その昔、ラスベガスのカジノで大敗した後に、空港の売店で”Casino Games”(John Gollehon)という本を買った。帰りの飛行機で読んでいたら、隣の席のアメリカ人から、「そんなもの、今頃読んでどうするんだ?」とからかわれたものである。が、何事も本番の直前と直後くらい、物事が頭に入る時間はない。
 ということで、上記のようなブラックジャックのセオリーはその本で学習した。ソウルではそれを実戦で試してみた。セオリーを丸暗記して挑んだ結果は、「まあ、こんなものかな」であった。なるほどこれなら大きく負けることはない。が、よほどのビッグウェイブが来なければ、勝つことは不可能だなという印象であった。
 やはりカジノにおいて、究極の勝負はバカラである。いちばん大きなカネが動く種目である。ということで、午後10時頃からバカラの卓に移動した。
 ゲームそのものは単純だ。花札のオイチョカブと同様に、トランプのカードを2枚併せて、1ケタの数が9に近い方が勝ち。足りない時は3枚目を引ける。これをバンカー(胴元)とプレイヤー(客)の双方に分けて競い、どちらに賭けますか、という勝負である。
 カードを引く順番からいって、バンカーの方がやや勝率が高く、ただし賭けた金額から5%のテラ銭(手数料)を引かれる。プレイヤーはやや不利であるが、こちらに賭けた分はそのまま得ることができる。

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執筆者プロフィール
吉崎達彦
吉崎達彦 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
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