台湾・国民党・共産党「それぞれの抗日」の行方

執筆者:野嶋剛 2015年12月7日
エリア: アジア

 歴史というのは、厄介な代物である。なぜなら、歴史には、歴史観というものが伴い、歴史観は国や地域によって異なり、同じ歴史的事象に対して違った解釈を生み出す。ときにその解釈が、まるで別世界のもののようにかけ離れ、お互いに相容れないことになる。

 台湾をめぐっては、特に歴史観の対立が鮮明に浮かび上がることが多い。なぜなら、台湾では「台湾の抗日」、「国民党の抗日」、そして「共産党の抗日」という「3つの抗日」が絡みあい、ぶつかりあっているからである。

 

中国政府の政治的な試み

 この秋、北京にある中国人民抗日戦争紀念館に「台湾抗日」の展示コーナー「台湾抗日同胞史実展」が完成した。「北京秋天」の言葉にふさわしく、PM2.5がまったく感じられないブルーの秋晴れの下で、日中戦争が勃発した盧溝橋にある紀念館に向かった。紀念館は中国の抗日戦争に関する最大の権威であり、展示内容は基本的に中国共産党の公式見解だと考えていい。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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