歴史というのは、厄介な代物である。なぜなら、歴史には、歴史観というものが伴い、歴史観は国や地域によって異なり、同じ歴史的事象に対して違った解釈を生み出す。ときにその解釈が、まるで別世界のもののようにかけ離れ、お互いに相容れないことになる。
台湾をめぐっては、特に歴史観の対立が鮮明に浮かび上がることが多い。なぜなら、台湾では「台湾の抗日」、「国民党の抗日」、そして「共産党の抗日」という「3つの抗日」が絡みあい、ぶつかりあっているからである。
中国政府の政治的な試み
この秋、北京にある中国人民抗日戦争紀念館に「台湾抗日」の展示コーナー「台湾抗日同胞史実展」が完成した。「北京秋天」の言葉にふさわしく、PM2.5がまったく感じられないブルーの秋晴れの下で、日中戦争が勃発した盧溝橋にある紀念館に向かった。紀念館は中国の抗日戦争に関する最大の権威であり、展示内容は基本的に中国共産党の公式見解だと考えていい。

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