北朝鮮「水爆実験」:「中朝冷却化」は本当か?

執筆者:村上政俊 2016年1月14日
エリア: アジア

 1月6日に北朝鮮は4回目の核実験を行い、「初めての水爆実験に成功した」と主張しているが、注目すべきは事前通告がなかったという中国の対応である。華春瑩中国外交部報道官は、2日後、8日の定例記者会見で、金正恩朝鮮労働党第1書記の誕生日にあたり祝意を伝達したのかという質問に、「我不知道(I don’t know)」と答えたが、このやり取りは、外交部公式ホームページにはなぜか掲載されていない【リンク】
 2015年の誕生日の際には、同じ質問に対して、北朝鮮に祝意を伝達したと回答していることから【リンク】、「私は知らない」という今年の回答は、とっさに出た言葉というよりは、準備された応答要領に基づくものであると考えることが、外交上の常識である。もし中国が、北朝鮮のいわゆる「水爆実験」への怒りを真剣に表現したいのであれば、祝意を伝えていないとした上で、北朝鮮への批判を述べればよいはずだ。しかし、このような一見あいまいにみえる中国の対応から読み取れることは、一部日本メディアで語られているように、中国が北朝鮮の暴挙に怒り心頭というのは全く誤りで、中国が祝意伝達を婉曲に肯定し、中朝関係維持に腐心していることを意味している。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
村上政俊(むらかみまさとし) 1983年7月7日、大阪市生まれ。現在、同志社大学嘱託講師、同大学南シナ海研究センター嘱託研究員、皇學館大学非常勤講師、桜美林大学客員研究員を務める。東京大学法学部政治コース卒業。2008年4月外務省入省。第三国際情報官室、在中国大使館外交官補(北京大学国際関係学院留学)、在英国大使館外交官補(ロンドン大学LSE留学)勤務で、中国情勢分析や日中韓首脳会議に携わる。12年12月~14年11月衆議院議員。中央大学大学院客員教授を経て現職。著書に『最後は孤立して自壊する中国 2017年習近平の中国 』(石平氏との共著、ワック)。
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